貴方を求める許可をください


 時折、どうしようもなく不安になる。彼が自分をどう思っているのか気になって泣きたくなる。

 付き合っているのだから少なからず好きなのだとは思う。それは分かる。けれど、「好き」の度合いというのか程度というのか。それを測れないことがどうしても歯痒くて仕方なくなってしまう。

 だって、絶対に、私の方が彼を好きだ。別にそれ自体に不満がある訳ではないのだけれど、只それをどこまで伝えていいのか、分からない。
 全部伝えてしまったら、きっと重い女だと思われてしまう。それくらい私は彼のことが好きだ。それを共有出来れば幸せだと思うけれど、彼の心中を覗くなんてとても私のお粗末な脳味噌では不可能だ。

「先輩」
「なんや?」

 私のこと好きですか?

 聞きたい、聞けない。

「先輩」
「んー?」

 私のこと本当に好きですか?

 ……聞けない。

 手を握って、抱き締めて、キスをして、好きだと言って。

 彼を愛して、見返りだなんて求めてはいけないのだと思う。でも愛されてる確証をどうしても欲してしまう。

 溜め息が漏れそうになるのを、必死で噛み殺した。今は、部活中だった。けれど、自然と視線は先輩に向いてしまう。熱の集まる頬をファイルでそれとなく隠して、もう一度だけ、ちらりと視線を送る。すると、レンズ越しの切れ長の瞳と、しっかりと目が合ってしまった。先輩は可笑しそうにいつもの笑顔を深める。

 バレバレやで

 先輩が口パクでそう言えば、頬の熱は全身に広がった。羞恥で湯気が出そうな勢いで熱くなる。
 それを見た先輩はまた可笑しそうに笑っていて、もう泣きたくなった。タイミングがいいのか悪いのか、休憩に入るブザーが鳴った。
 先輩がこちらに向かって歩いて来る。全力疾走で逃げたい。ていうかもう逃げ腰なんですけど。

「白河顔赤すぎやろ」
「き、気の所為だと思います」
「えらい大胆な嘘やな」
「気の所為ですよ!」
「あんな熱視線送っといてよく言うわ」
「送ってないです!」
「えー、わしは見てたで? 白河のこと」
「……嘘」
「嘘やないし。なんや白河が百面相してたのも見てたし」
「え!?」

 もう穴があったら入りたい所じゃない。あのうだうだ考えてる所まで見られていたなんて。

「わしのことめっちゃ好きって視線くれてたやん」
「ち、が!」
「えー、違うん?」
「……」
「わし、嬉しかってんけど?」
「ち、」
「ん?」
「ちがくは……ない、です」

 歯切れ悪く尻すぼみな声は先輩にはなんとか届いたらしくて、やっぱり先輩は笑うと急に顔を近付けた。

「あとな、ええこと教えたる」
「な、んですか?」

 わしも白河のことめっちゃ好き。

 耳元でぼそり、と落とされた言葉はあまりにも破壊的で、顔は熱いし涙すら出てきた。この人の心中を探るどころか、私の考えてることなんてお見通しらしかった。
 私はなけなしの勇気を振り絞って、少しだけ踵を上げて、先輩にだけ聞こえるように小さくこぼしてみた。

infinity様よりお題拝借

今吉さん方言偽物



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