赤司くん



夢主の口が悪いです。





 その日は折角の休日だというのに、なんだか嫌な予感がしていたのだ。朝なんとなくチャンネルを回したとき、目に留まったおは朝の占いは最下位だった。まあ、でもバスケ部のおは朝信者の彼でもあるまいし。多少テンションは落ちたけれど特に気に止めることもなかった。

 “最下位のあなた!今日は赤いものに注意!”

 明るい声と笑顔でそう告げたアナウンサーのお姉さんを二度見してしまった。

 赤、に気を付けるだなんて。いやいやいや、無理だろう。連想される人物を頭に浮かべながら真剣にそう思う。こちらで気を付けたところでどうにかなる相手ではない。

 いやでも今日はなんといっても休日だ。私は基本的に家から出ないし、うん問題ない。今日は母さんも父さんも出掛けているし、一人家でごろごろぐだぐだすることに全身全霊を掛けて臨む所存だ。うん、やはり問題ない。

 だからインターフォンが鳴ったとき、尋常じゃないほどびくついてしまった。ソファーに寝転んでいた私の上に乗ってたチャイ(飼ってる猫)が全力疾走で逃げた。

 恐る恐る玄関の覗き穴を見れば、某有名お引っ越し会社の方のお兄さんが爽やか笑顔で立っている。だから、すっかり安心してしまったのだ。少なくとも予想の人物とは違っていたことに油断した。

 勢いよくドアを開けば、香ってくるというよりもまとわりつくような甘ったるい香りが私を襲った。ぽかん、という表現がこれ程までに的を得たのは、産まれてこのかた初めてだった。

 真っ赤だった。ひたすらに真っ赤な薔薇で、玄関前が埋め尽くされていた。

 颯爽と去っていく爽やか営業スマイルのお兄さんが悪魔に見えた。

 私はポケットからおもむろに携帯を取り出すと、迷わず奴に電話を掛けた。


『君の方から電話を描けてくれるなんて嬉しいね』

「ふざけんなよ!」

『あ、届いたのかい?』

「届いたじゃねーよ!何なの!?まじで!」

『ちゃんと届いたみたいで良かったよ』

「良くねえよ!何本あるのこれ!」

『今回は999本だね』

「(絶句)」

『薔薇の本数には意味があるって話しただろう?』

「あんたが前に365本送ってきたとき聞いたわ!あんときもうしないっつっただろうがあああああああ」

『まあ、いいじゃないか』

「まあ、で許されるレベルじゃねんだよ!」

『で、999本の意味だけど』

「おい話を聞け」

『何度生まれ変わってもまた貴方を愛します、だから来世でも宜しく』

「全力で拒否する!」





365本「毎日恋しくてたまらない」で前科のある赤司くん
赤司くんなら薔薇の999本くらい楽々と調達してきそう


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