「先輩、何してんの」
「んー? 寝てるの」
「そこ俺のベッド」
「ここは保健室のベッドだよ」
やっぱり可笑しそうにくすくすと笑う先輩に溜め息を吐いた。
いつものように保険医のいない時間、例のごとく保健室を訪れた俺は、いつも余裕をかましたような先輩の出迎えがなかったことに少なからず驚いた。
そしていつものベッドに横になろうと白いカーテンを引けば、いた。
いつものあの笑みで、人を小馬鹿にすらしてるようなムカつくあの笑顔で。
何がそんなに楽しいのか先輩は俺を見るとくすくすと笑った。でも嫌じゃない。いい気分でもねーけど。
ぎしり、とベッドに腰かける。先輩が起き上がる様子はない。
「珍しいすね」
「んー?」
間延びした声と、細められた目はやっぱり俺をおちょくっているように思える。
「寝てんの、珍しいだろ」
「そうだねー」
保健室には寝るために来るような俺と違って、「避難」しているらしい先輩はいつも保険医のデスクに座ってくるくると椅子を回している。
「具合、悪いのか」
自然と漏れた一言に、先輩は一瞬きょとんとした顔を見せた。すぐにいつものようにくすくすと笑い出す。
「心配、してくれてるの?」
別に、そんなんじゃ、ない。とも言い切れないこともなくもない。
俺は視線をさ迷わせると、結局は何も返さないことに落ち着いた。
「元気だよ」
小馬鹿にしたような目は閉じられていた。口許だけがゆるりと小さく弧を描いている。
「青峰くんが来てくれたからね」
くそ、思わず零れそうになった声を咽の奥に押し込む。
真っ白なシーツを流れる黒髪をといてやることは咎められるだろうか。透けるような頬に指で触れたいと思うのは間違った衝動なんだろうか。
ぱちり、とそうこうしている間に睫毛に縁取られた目が開く。やはり人を小馬鹿にしたような目は俺を捉えると緩く細められた。
刹那、白くて矢鱈と細い腕が流れるように伸びてくる。華奢な指が俺の頬を掠めるように撫でると、今度は力尽きたようにするりとシーツに落下した。
内心恐る恐る、先輩の頭を覆うように触れてみる。余りの小ささに少しだけおののいた。
あやすようにぽん、ぽん、と撫でてやれば、今までの笑みは笑顔ではなかったのかと思うような。今までにないくらい穏やかな表情を浮かべた。
静かに響く規則的な寝息を、無防備だとは思いつつも、俺はもう暫くはこのままでいてもいいと思った。
書いてる自分も意味わからん
先輩は一体何者なの