どうにかしたくっても、自分じゃどうにも出来ないことってあるじゃない。
地球温暖化だとか政治のごたごただとか世界平和だとか。まあ、そんなことをどうにかしようだなんて思ってはいないのだけど。
そんなとんでも規模の話じゃなくて、自分自身のことだってままならないことなんて沢山ある。
もう少し体重減らないかなとかそれでもバストはもっと大きくならないかなとかもうちょっと数学の点数どうにかならないかなとか。こんなことは、やろうと思えばどうにかはなるんだけど。どうしようもないことってのは自分自身だけど、自分自身だからこそあるものだと思う。例えば感情だとか。
前置きが長くなってしまったけど、私は今そのどうにもならない感情にある訳で。しかも、質の悪い所謂不機嫌というか苛つきとかいうやつで。
更に最悪なのは今現在青峰の家に二人っきりってこと。別に青峰の家に二人っきりでいることに不満がある訳じゃない。一応恋人であるのだから一緒にいられるのは嬉しいに決まってる。
いらいら、いらいら、いらいら、いらいら、
ああ、もう自分が嫌になる。然り気無く指で額を押さえる。さっきから、というより学校を出て青峰の部屋に入って今に至るまで、会話が全くない。
青峰だって変だって思ってる筈だ。もしかして、無愛想な態度の私に怒ってるのかもしれない。
溜め息を吐きたくなったけど、どうにか我慢する。お腹がずきずきする。
横目で隣の青峰を伺うとバスケ雑誌を読みながら、眉間に皺が寄ってる。やっぱり怒ってるんだ。
いつも私たちは青峰のベッドを背もたれにするようにして並んで座ってるけど、いつもなら当たる筈の肩が今日は右側が寒い。
そんなに怒らなくてもいいじゃない。私だって悪いけど、どうしようも出来ないんだもん。
いらいらいらいらいらいらいらいらいらいら
溜め息。
一瞬、息が止まった。
紛れもなく隣から聞こえたそれに、泣きそうになった。
嫌われた?呆れられた?どうしよう、どうしよう。
「おい」
肩が跳ねる。
恐る恐る青峰を向くと、険しい顔でこちらを見据えられる。
青峰は私の隣で片膝を立てると、するりと背中と膝裏に腕を入れた。
「え?」
え、え?なにこれ?いや何かは分かる。何をしようとしてるかは分かる。これはあれでしょう?俗に言うお姫様抱っことやらを成そうとしてるんでしょ?
なんでこのタイミングでお姫様抱っこ!?青峰の思考を読むなんて簡単だと幼馴染みのあの子は言っていたけど。いやいやいや、だってアホ峰だし!アホの考えなんて分かんないし!私もあんまり頭良くないけど、アホ峰まで降りてはいけないし!
え、もしかして私このまま投げられちゃったりするの?……どこに!?いや、今はまずいって、ベッド相手でもちょっとやばい。おなかいた……
青峰の腕が余りにも優しくベッドに寝かしてくれたことで、私の葛藤は全くの杞憂に終わった。
「お前、具合悪ぃなら先に言えよ」
「へ?」
思わず素頓狂な声が漏れた。
「様子見てりゃわかんだよ」
あ、やば。
「おまっ、何泣いてんだよ!」
これだってどうしようもない。嬉しいんだか、安心したんだか。
「泣くほど具合悪いのか!? 家に帰るか?」
「ち、ちが……だ、だって、あほみねが、かっこいいからぁ〜」
「はあ?」
泣いた理由はやっぱ惚れ直したせいかなあと思う。そういうことにしておこう。
*
「で、結局なんで具合悪かったんだよ」
「ん? ああ、生理痛ー」
「ぶっ」
「青峰きたなー」
「じゃあわざわざウチ来なくてもよかったんじゃねーの?」
「アホ峰」
「あん!?」
(好きなやつとはちょっとでも一緒にいたいじゃん)
(なんでそこは鈍いの)
甘いの目指して生理ネタって……!
しかも峰氏あんま出てない……
慌てふためく主人公は書いてて楽しいです