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ゆずきちゃんは帝光出身。




 なんだか様子が可笑しい。そう気付いたのは練習が始まってすぐ。一番最初に違和感を感じ取ったのは日向だった。流石主将といった所か。
 体育館には未だ一人、バスケ部員が揃っていない。今日は火神が掃除当番で遅くなるとのことだった。しかし火神がいないことが違和感の正体な訳では決してない。あんな存在感がある奴、違和感感じる前に気付くに決まってる。
 火神ではなく、彼と同じクラスであるマネージャーと黒子の様子が変なのだ。どうも落ち着かないというか、何やらそわそわしているというか。今のところ部活に支障はないのでほっといてはいる。


「ちわーす! 遅れてすいません!」

 あれこれなんてデジャヴと思いつつも、主将として後輩の教育は怠る訳にはいかない。

 おせーよ、という喝は入らなかった。というよりも、入れることができなかったという方が正しい。
 日向の口はお、のままで固まっている。そしてバスケ部ほぼ全員が一時停止するように火神から視線を逸らせない。当の火神も何やら妙な雰囲気に気付いて困惑した様子を見せる。



 え、何だ、ですか「ぶ」



 金縛りが解けたように今度は声の方に目を向ける。すると俯いて肩を震わせる白河と黒子。ほぼ全員、の残り二人だ。覗く耳まで真っ赤に染まっている。
 そこでやっと――あぁ。とバスケ部の面々は納得し、安心したように爆笑が溢れる。

 この場で状況を分かっていないのは火神一人で、しかもどうやら自分が笑われているたしいと気付けば困惑はふつふつと沸き上がる怒りに変わる。元々彼は血が昇りやすい質なのだ。


「なんなんだ! ですよ!」

「お、おま、顔」

 ヒーヒー苦しそうに息をしながら涙すら出てきている小金井が指摘すると、顔?と言いながらぺたぺたと手で触ってみるが、特に異常は感じ取れない。


「ちが、ちょ、誰か鏡持ってねー?」

 そこで待ってましたと言わんばかりに手鏡を差し出す白河を訝しげに見やると、それを覗き込んで、

「なんじゃこりゃー!」
 その絶叫は、皆の笑い声に更に拍車を掛けたが、火神一人だけ違う意味で真っ赤になる。

 鏡に映る自分の顔には、額に「肉」の文字。頬には猫のような髭。そして片目を閉じてみるとご丁寧に瞼に目が描いてある。

 こんなこと、いったい誰が、と思って考えるまでもなくある人物たちに視線を向ける。


「本当に気付かなかったよ! テッちゃん!」

「正直ボクも今まで気付かないとは思っていませんでした、ぶ」


 しかし、いつの間に。昼休みにトイレに行ったとき鏡に映る自分の顔に落書きはなかった。

 ――あ、六限目。クラスは自習で完全に爆睡していた。無防備にも、顔を隠さずに。そして起きる直前、何やら目の前で光を感じたのを思い出す。


「取り敢えずお前ら、ケータイ出せ」

「え、やだ。なんで」

「折る」

「それは困ります」

「写メ撮っただろうが!」

「てへぺろ」

「今すぐ消せ!」

 その言葉に白河と黒子は目を合わせ、眉を下げる。

 ――まさか。さ、と今度は青くなる。


「もう送っちゃったもん」

「てめぇぇぇぇらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「てへぺろ」

「てへぺろ」

「うぜえ! つか誰にだ! 誰に送りやがった!」


 一番可能性があって、最悪なのは青峰だ。いや、緑間に送られて鼻で笑われるよりいいか。黄瀬だとうるさくてうざそうだ。いやもう誰であっても最悪だろう。


「うーん」

「誰って、言いますか……」

「「キセキ(みんな)に」」


 予想を裏切らない二人のハモり声に火神の絶叫が体育館に虚しく響いた。





賑やかな文は書いてて楽しいです
この後しばらくかがみんはキセキやらに突っつかれます
むっくんにぷーって笑われます


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