弾かしい!


 古豪秀徳高校バスケットボール部は、東の王者の称号を掲げられている訳だが。やはりそれまでに至る実力があってこそであり、そしてまたそのレギュラーとなるには更なる努力無くしては成り得ないということなのである。つまり何が言いたいのかというと、彼らバスケットボール選手たちの高校生活はやはり部活を中心として回っているのだ。努力の為に削られるものというものの内の一つが時間であり、

「ごちゃごちゃ五月蠅い、轢くぞ」
「うぇい」

 一蹴なさったのは隣から冷たい視線(睨みとも言う)を此方に一心に向ける宮地清志君ですよー。清い志しと書いてきよし君っていうのよ、名前負けもいいトコだよね全く。口を開けば物騒なことばっかり言うのよ。言っとくけどこの人私の彼氏だからね!そして私は彼女だからね!そして絶賛デートなうだからね……!

「いい加減黙らねぇと塞ぐぞ」
「ちゅーで?」
「……」
「え、ちょ、ドン引きやめて」

 そうそう何が言いたいのかって話だったけど、つまりだね。宮地の時間が減るってことはふたりの時間はもっと減るってことなんだよね。しかも宮地相当努力家だからね、いつも遅くまで残って練習したりしてるしね。そんな所がどうしようもなく好きなんだけど、ね。それでも寂しいもんは寂しいし、会える時間は嬉しい。テンションが上がっちゃうのも当然だと思うんだよ。ぺらぺらと続けられる私の戯言に相槌すら無く隣を歩いている訳なんだけど、不意にがつんと肩に衝撃というのか衝突というのか。

「いった!急に何すんの!」
「別に」

 右肩、つまり宮地側の肩。普通のカレカノなら最も安心安全な部位な筈だというのに今この人自分の彼女の肩殴りましたよ、おまわりさーん!所謂肩パンというそれは地味に痛い。非難の声を喚く私に対してしれっとした様子の宮地にむかっ腹が立つ所じゃないんですけど。ていうか何急に肩パンて、私がそんなに鬱陶しいか!

「で、どこ行きたいの」
「遊園地!」
「アホか」
「別にー、ちょっと言ってみただけですよーだ」
「拗ねんなよ、ブスが酷くなんぞ」
「遠回しに彼女のことブスとか言ってね?」
「遠回しじゃねーよ」
「喧しいわ」
「お前がな」

 相変わらずの会話が心地よくてたまらない。宮地の肩に軽く肩を当ててみれば、今度は何だよとばかりに煩わしそうな顔で見下ろす。それすらも幸せに感じてしまうのは二人の時間が少なすぎる故なのだろうか。そんな顔するくせに口悪いくせに、ちゃんと歩幅合わせてゆっくり歩いてくれたり、とか。そんな機微はきっと見失いがちだと思う。それならこの時間的距離もありなのではないだろうかと、楽観視。

「で、どこ行くの?」
「あ?遊園地じゃねーの?」
「ええええ、いやいや!冗談ですけど!」
「知ってる。でもいつもあんま構ってやれねーし」
「お……あ、いや」
「なんだよ」
「それが聞けただけでもう十分すぎるんですが……」
「……急に殊勝になんな」
「あ、もしかして照れてね?」
「うっさい、塞ぐぞ」
「ちゅーで?」

 先程と同じボケをかました私の言葉を最後に宮地は立ち止まる。え、またドン引きかよ。ちょっとしたバカップルギャグじゃんとへらりと笑うと、伸びてきた腕に胸ぐらを掴まれる。

「え、なに!?ごめんなさい!?」
「お前ちょっと黙れ」

 引き上げられるのと同時に屈む宮地の所為で自棄に距離が近い。目の前で落とされた言葉とそれは、私を黙らせるには絶大な効果を発揮した。

「ちゅーでだけど何か?」

 しれっと抜かすけど宮地くん、貴方どうしちゃったの。とかそんなことも言えないくらい恥ずかしいやらでも嬉しいやらで、取り敢えず高い位置の肩を殴っておく。「痛くねーよ」とか言うくせにきっちり仕返ししてくるんだけど、さっきの彼は別人ですか。ああもう、顔赤いとか知ってるわばか!


title by 嘘だよ
いちゃいちゃさせたかった。思いっきりいちゃいちゃさせたかったんです!



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