玄関の扉を開けると、そこにはサンタクロースがいた。


「どうしたの、その格好」
「これはその……兄さんとシェリアが面白がってやったんです!」

ヒューバートは照れながら被っていたサンタ帽を脱ぎ捨てる。とりあえず立ち話もなんなので部屋まで案内した。

「そもそもナマエのせいじゃないですか」
「私? なんか言ったっけ」

適当にお菓子なんかを引っ張り出してローテーブルに並べながら、色々と思い出してみる。
そして思いついたのは昨日、私とヒューバート、アスベルにシェリアといういつもの幼馴染みメンバーで学校帰りにファーストフード店に寄ったときの会話だった。私がぼそりと呟いた「サンタさん来てくれないかな」という言葉。もちろん本気で言っているわけではない。でもプレゼントをなんでも届けてくれるサンタクロースなら、私が今欲しいものをくれるのかなと思っただけ。

「それを真に受けたわけだ」
「ですから、ぼくの意思では……ああもう」

けらけらと笑うとヒューバートはまた照れて、カップに注いだ紅茶に口をつけた。

「でも、サンタさんに成りきるなら夜にこっそり来て枕元にプレゼントを置いてってくれないと」
「考えてみて下さい、それは不法侵入です」
「ああ、そっかあ」
「……本当にいつか泥棒に入られますよ」

呆れた顔で睨まれる。まあ冗談冗談、と私はたくさんあるお菓子の中から適当に選んでつまむ。最早本来の目的も忘れ、二人でぐだぐだと喋りながらプチパーティのようになっていた。
結構時間が経った時、ヒューバートがふと思い付いたように言う。

「そういえば、プレゼントを持ってくるのを忘れたのですが」
「それはサンタとしてどうなの」
「仕方ないでしょう、ナマエの欲しいものがなんなのか結局わからなかったのですから」

う、と言葉に詰まる。私の欲しいプレゼントとは、思わずサンタクロースに願ってしまうくらい、自分で手に入れることを諦めていたものだった。しかも――

「? どうしたんですか?」

本人を目の前にして言えるものか。その……“ヒューバートの心が欲しい”だなんて。自分でもこれはないだろうと思うけど、仕方ないじゃない。何年経っても気づかないヒューバートが全面的に悪い。

「きょ、今日は特別ですから……何か欲しいものがあればプレゼントします」
「え……」
「ほ、ほら! 早く言わないと帰りますよ!」

私がうろたえているうちに、ヒューバートはすくっと立ち上がる。ああ待って、でも言えない、だけど帰らないで。すると無意識に腕を伸ばしていて、ヒューバートの服の袖を掴む。突然のことに、二人して驚いた顔。いや自分もびっくりしてどうするんだ。しかし引き止めてしまったなら、覚悟を決めないと。

「えー、っと……」
「な、なんですか」
「その、ヒューバートが欲しい、かな……なんて」

うわあ言ってしまった。顔が熱い。恐る恐る頭を上げて、ヒューバートの表情を伺う。案の定リンゴのように真っ赤で、私も同じくらいなんだろう。


「……そういうことなら、早く言ってください」

するとヒューバートは私の腕を引っ張った。


気づけば私はヒューバートの腕の中にいた。言ってみるもんだなあ、とぼーっとする頭の中で考えていた。

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