一目惚れ、なんてあり得ないと思ってた。まあ……つい最近までは、なんだけども。


王都バロニアは今日も快晴。私の日課は、買い物の後にベンチに座って日向ぼっこをすること。ついでにアイスキャンディーなんかも買っちゃったり。
実はこの日課、昔から継続してるわけではない。訳あって最近始めたのだ。

「アイスキャンディー、一つ下さい」

ああ、来た。毎日ではないけれど、この時間頻繁にアイスキャンディーを買っていく、赤い髪が特徴の青年。
以前、買い物の帰り道に気まぐれでアイスキャンディーを買ったときのこと。たまたま前にいた人が買ったのが最後の一本だったらしく、残念ながら買えなかった。その時、最後の一本を買った人が「いつも食べてるから」と笑顔でアイスキャンディーを渡してくれたのだ。
その時のお客さんが、あの赤い髪の彼。その優しさと笑顔に、うっかり恋に落ちてしまった私。それ以来アイスキャンディーを日課としている、という訳だ。

でも、どうも引っ込み思案な私は自分から話しかけることができないでいた。たった一度だけしか言葉を交わしていない、そもそも私の事を覚えてくれているのかさえわからないじゃないか。
その時。ひゅうっと強い風が吹いて、ベンチに掛けていた私のカーディガンが飛ばされてしまった。

「あっ!待って!」

ふわりと風に乗るカーディガンをとっさに追いかける。手を伸ばしてみても、私の身長ではギリギリ届かない。
どうしようと思っていると、カーディガンは誰かの手によって捕らえられた。驚いて前方を見る。はい、とそれを私に手渡す人物は、私がずっと焦がれていた人。


「あの日から、ずっと通ってるんですね。俺もここ好きなんです」

私の日課は、空回りではなかったみたいでした。


091217
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