貴方が私を子供だというのなら。
「マリクさん、愛してます」
「その台詞はもう聞き飽きたな」
革張りのソファが二人分の重さに音をあげた。マリクさんが寝転がっていた所に、私が覆い被さったためだ。彼はまたか、と呆れた顔をする。このやりとりも何度目だろうか。
「お前はまだ若いんだ、俺に執着してる暇があるならもっといろんなことしとけ」
この人はこうやって私の気持ちをいつも巧くかわす。子供扱いされているのがやっぱり悔しくて、マリクさんの服をぎゅっと握る。そういえば、こういう仕草も欲しがりな子供のようだ、と前に言われた。今もほらみろまたやった、と言わんばかりの顔で笑う。
「私、もう子供じゃないです」
「アスベルと同い年なんだろ?俺から見れば立派な子供だ」
「貴方を好きな、一人の女性です」
目を逸らさずにハッキリとした口調でいい放つ。すると彼はそうか、と心底可笑しそうな眼。不意に大きくてゴツゴツした手が、私の髪をかきあげて後頭部まで滑り込み、そのままぐいと寄せられる。お互いの額がこつんとぶつかり、顔が至近距離に置かれた。
「やっとその気になりました?」
「後悔しても知らんぞ」
「最初からそのつもりですよ」
貴方が私を子供だというのなら、貴方の手で私を大人にして下さい。それくらい、大人の貴方なら余裕でしょう?
091217