ティールにねだられ天階祭日の会場に来たはいいものの、人の嵐でリザルドの体力は既に半分も失われてしまっていた。
「ぱぱ体力ないんだね!」
「うっせえ!」
若者、しかもまだ幼い少女と中年とでは明らかに体力も身体能力も違う。心中そう叫びながらも、リザルドの足は娘に遅れをとらないよう必死だった。はぐれないように娘を掴もうとするが何度も掌が宙を舞い、その度に虚しくなるばかりだった。
「ぱぱぱぱ!ねえおっきい笹があるよ!願い事書こうよ!」
ティールが指さす先には大きな笹があった。そこにはたくさんの短冊が飾られており、かわいらしい願いから少し邪な願いまで見える。
「俺はいい」
「なんで?じゃあぱぱの分もお願い事書こうか?」
「余計な御世話だ」
45歳にもなって少女と一緒に願い事を書くなんてばかばかしすぎる。そう思いながらも小さな願いはあったのだが、短冊に書く程でもない。仕方なくティールの分だけ短冊を貰いペンと共に手渡すと、ティールは意気揚々と備え付けの長机の方に走って行った。
自分の願いは何だ。もう一度自身に問いかける。改めて問いかけても小さな願いには変わりなかったのだが、万が一娘に見られてしまうと何を言われるか分からない。あの娘の事だ、周りに言いふらすかもしれない。それだけをただぼんやり考えているとティールが走ってきた。もう書き終えたのだろうか、小さな手には何かしら文字が書かれた短冊と、もう片方の手には何故か新しい短冊が握られていた。まさか。
「できたよ!ぱぱ飾って!」
「わーったから。…で、その短冊はなんだ」
「え?ぱぱの分だよ?」
やっぱりか。そう叫びたかったが周りには人がいたのでその言葉を飲み込む。断りたいのだが、ティールの眼差しがあまりにも純粋なため断り辛い。
「いらねえっつっただろ」
「ぱぱも書こうよう」
「いやだから」
「書こうよー!」
「いらねえって」
「ぶー!ぱぱも書くの!」
「…あー!わーったから貸せ!」
半ば強引にティールから短冊を奪い、長机に向かう。ペンを取る隣でティールが短冊を覗くのでものすごく書きにくいのは言わずもがなである。
「おい見るなよ」
「えー?いいじゃん」
「見るな」
「や!見る!」
「見んな!」
「見る!!!見るったら見るの!!!」
「ああもううっせえ!わーった書けばいいんだろ書けば!!!」
ティールには勝てるはずもなく、加えて周りがこちらを見ているので早々に書き上げるしか手段はなかった。ペンを早急に走らせ書き終える。
「さ、飾り付けるぞ」
「うん!…て、え?」
「乗れ」
笹の前で屈むリザルドを見て少し戸惑ったが、その体制の意味を理解すると彼の短冊を受け取り肩に乗る。リザルドが立ち上がりティールは自分の短冊を取り付けると、彼の短冊を見て思わず顔がほころびそうになる。
「おい何見てんだ」
「ん?べつにー」



『ぱぱとずっといっしょにいられますように ティール』
『娘と妻が安心して暮らせるように リザルド』



りゅうせいぐんにねがいを




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2011.7.10
天階祭日・義親子
ティールちゃんお借りしました
エアー表現すみません




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