暖かい背中 クラロイ気味な親子話 あんたの大きな背中 今は見る度に その暖かさを思い出す なぁ、どうして俺は 忘れちまってたんだろうな? その暖かも大きな背中を ◆◆◆ ――小さな俺が笑いながら走っている。 その傍らには優しそうなクラトスと母さんの笑顔。 “とうしゃ! かあしゃ!” 小さな俺はそう言って二人に向かって走り、抱きついた。 二人に抱きつくには短すぎる小さな手。 それでも精一杯に手を伸ばして二人に抱きついていた。 俺の二人へ対する愛情表現。 手にはこれまた小さな花輪が二つあった。二人へのプレゼントなのだろう。 小さな俺は二人に屈んで欲しいと頼み、そしてその小さな花輪をそれぞれの頭の上に乗せた。 “とうしゃとかあしゃに!” 満面の笑み。それはとてもとても嬉しそうに。 二人も小さな俺に釣られるように笑ってくれた。 穏やかな時間。平穏な日々。 “ロイド” “ロイド” 二人が呼びかける。笑いながら、それは愛しそうに。 ――嗚呼、何て幸せな家族だったんだろうか。 こんな暖かな日々。こんなものがあったことなんて、俺は思いもしなかった。 「……んっ」 うっすらと目が開けてゆく。まだ、部屋の中も窓の外も暗い。 まだ夜中なのだろう。 「……夢、か」 とても懐かしい…というより、暖かな夢。 ロイドの中で忘れさられていた記憶の一つだったに違いない。 クラトスが自分の本当の父親と分かってから、ロイドの中に幼いころの記憶が少しずつ戻ってきている。 それは、オリジンを解放し、ミトスを倒し、大樹カーラーンを復活させてからは尚更。 夢で幼いころの姿を見るのだ。 それまでは思い出すことも思い出そうとすることもなかった。 今ではどうして忘れてしまっていたのだろうか、と自分を罵りたくなるほど。 それくらいにどんどんロイドの幼いころの記憶は戻っていた。 「……」 ロイドは静かに目を閉じ、先ほどの夢の情景を頭の中に浮かべる。 穏やかなクラトスとアンナの姿。自然と優しい気持ちになり、顔が緩む。 心がほっこりとした暖かいもので満たされていく感覚。 「父さん…、母さん…」 ロイドはその名を愛おしそうに呟いた。 しかし、ほっこりとした暖かい気持ちと同時に悲しい気持ちも溢れてきてしまう。 (……俺、クラトスのことユアンに言われるまで父さんって思いもしなかった。しかも、覚えてなかったってのはしょうがないにしても、酷いことに父さんって認めなかったんだよな……。今はこんなにも思い出すくせに) 心がツキリと痛んだ気がした。 (最低だ、俺…) 悔しさと悲しさ。うっすらとロイドの瞳に涙が溜まる。 膝を抱えてそこに顔を伏した。じんわりと涙がズボンに染み込んでいく。 暖かさと同時に自分に対する罪悪感。何とも言えない感覚がロイドを襲った。 「……ロイド、泣いているのか?」 「!!」 突如、前振りもなく降ってきたクラトスの声がロイドの顔を上げさせた。 内心、ロイドは焦る。 「く…クラトス?」 クラトスは確か下の階で寝ていたはずだ。 そのクラトスが夜中に起きて、ロイドのいる二階へと上がってきているものだから、何かあったのだろうか、と少々不安になる。 「すまない、驚かせてしまったようだな」 「いや…、それは大丈夫だけど。クラトスこそどうしたんだよ」 クラトスは少々申し訳なさそうにロイドに向かって謝ったが、ロイドは気にせずにそう尋ねた。 「少々目が覚めてしまってな。そうしたらお前の声が聞こえたものだから起きているのかと」 「!! き、聞いてたのか!?」 クラトスの台詞にロイドは焦った。 先程の呟きを聞かれてしまったのだろうかと。 聞かれてしまったのだろうかと思うと、一気にロイドの顔が真っ赤になり、火を噴きそうになる。 「……すまない」 クラトスは否定をしなかった。それが更にロイドに羞恥心を煽らせる。 ロイドは下を向き、クラトスの顔を見ないようにした。 むしろ、恥ずかしくて見ることなど出来ない。 「あんな愛しそうに呟かれればな…」 クラトスは微笑し、羞恥心で顔を覆ってしまっている自分の息子を優しく抱きしめ、頭を撫でた。 ロイドは耳まで真っ赤になっている。 「〜〜っ」 ロイドは声にならない声で呻いた。かなり恥ずかしいのであろう。 聞かれたなど思っていなかったからこそ尚更に。 ここで止まった← 親子を書こう!と思ってたのに書いてたらクラロイになっているという不思議w 二人でアンナの話をして親子親子してたらいいなーと思ったんだけどな…。 ちっさいロイド君を書くのは楽しかった。 いつかちゃんと書き上げたい代物。 |