※クラロイ恋人前提/捏造/酷い 「……嘘、だろ」 唇から零れたのは否定の言葉。 目の前に広がる光景を受け入れたくなくて。 今までの現実と今、目の前に起こっている現実が信じられなくて。 何かがガラガラと崩れ落ちていく音が聞こえた気がした。 世界は甘くない 「…ク、ラトス」 目の前に立っているのは敵。 コレットをマーテルの器にすると天使は言った。 だけども、 ・・ これは……何だ。 目の前にクラトスが立っている。 背中には天使という証明をもたらす羽根の姿。 今まで、一緒に旅をして来た仲間で、ロイド自身の剣の師匠で。 ――そして、恋人であった。 その彼が今、敵側に立ち、ロイドに剣を向けている。 信じられない光景。 信じたくない光景。 それが目の前に広がっている。 「…どう、して」 頭の中がぐちゃぐちゃに掻き回される。思考が追い付かない。 否、追い付くことを拒絶していた。 「どうして、だと?」 クラトスは疑問の言葉を上げたロイドに対し、冷たい眼差しを向けた。 その眼差しにビクリとロイドの身体は震える。 己の知っているクラトスの姿はそこにはない。そこにいるのは冷酷な天使の姿のみ。 それでもロイドは信じられなくて、クラトスに語り掛けた。 「だって…、クラトスは俺らの仲間で。それに俺のことを――…」 「『愛してた』、か? ふん…くだらんな。あれは子供の遊戯に付き合っていただけだ。私は一度たりともお前らのことを仲間だとも、お前自身のことを愛してたなど思ってもいない」 紡ごうとした言葉は遮られ、変わりに絶望を与えられた。 ――すべては遊戯だったのだと。 ロイドとロイドの仲間達を欺く為の。 ただ、それだけだったと。 クラトスの言葉がロイドの胸の奥深くに刺さる。 ロイドの脳裏にクラトスとの思い出が蘇る。 己に大事なことと共に、剣術の稽古を付けてくれたクラトス。戦闘中、何かと気にかけてくれ、仲間と共に戦ってくれた。 そんなクラトスの優しさや強さに惹かれて、いつの間にか好きになっていて。 男でありながらも、それでもよいと受け入れてくれた。 微笑みながら“愛してる”と。 そう囁いてくれた。 それがすべて虚像。 クラトスにとっては、己の計画を実行せんが為の布石でしかなかったのだ。 ロイドはカタカタと震える。 信じられなくて。 信じたくなくて。 「…さぁ、遊びの時間は終わりだ」 けれども、クラトスは言葉を突き付けた。 嘘ではないのだと。 これが現実なのだと。 声にならない声。 気がつけば視界が涙で滲んでいた。 嗚呼、現実は、世界は甘くないのだと。 World is not sweet. (お願いだから嘘だと言って。) (09/09/12) あいうえお題 配布》蘖 |