僕にとっての大発見! いつも明るくて、バレー部のエースで、クラスでも人気者の木兎くん。でも何故か私にだけ、よそよそしい。 「木兎くん、今日の日直、私とだよ」 「お、おう」 また、だ。木兎くんは私が話し掛けても驚いたように目を泳がせる。他のクラスメイトなら、「よろしくなー!」って言ってそのまま楽しそうにお喋りしてるのに。 1年生のとき、バレーをしている木兎くんに一目惚れした。2年生で同じクラスになったとき、木兎くんは皆に挨拶をしていた。もちろん、私にも。それから普通にクラスメイトとして過ごしてきたはずなのに、いつの間にか木兎くんは私を避けるようになったのだ。 もしかしたら2年のときに何か木兎くんの嫌がることをしてしまったのかもしれない。それなら納得がいく。もしそうなら木兎くんは私との日直なんて気が重いだろう。 それなら私の淡い恋心は押し込めて、木兎くんの迷惑にならないようにするのが一番だ。どうせ叶わない恋なら、せめて面倒にだけはならないようにしよう。そう思って私は木兎くんに日直の仕事の分担を申し出た。あくまで、木兎くんが気にしないようにさりげなく。 「日誌は放課後まで残らなきゃだから私がやるね。黒板消しは木兎くんにお願いしていい?あとは……」 「ちょ、ちょい待って!それじゃ二人でやる意味無いじゃん!」 「え?ちょうど半々くらいになるようにするから大丈夫だよ」 「うーん?いや、そうじゃなくて!」 「だって、その方が効率的でしょ?」 「そう、か?」 木兎くんは腕を組んでしきりに首をかしげている。うんうんと唸る姿は悩ましげだ。なんとなく話が途切れてしまって、居心地が悪いのに離れづらい。さっさとチャイム鳴ってよ、といつもなら絶対に思わないことを考える。 「うん、だからさ、別にいーじゃん!」 「え、何が」 「効率的じゃなくても、二人でやった方が楽しいし!あ、名字は楽しくないかも、だけど……」 「……楽しくないのは木兎くんの方でしょ?」 あ、やばい口が滑った。木兎くんはキョトンとした顔でこちらを見てくる。こんなに長く目が合ったの久しぶりだな、なんて考えてすぐに、今はそんな場合じゃないと我に返る。 「……確かに、俺、名字といるとあんま楽しいー!って感じじゃない」 「うん、さすがに面と向かって言われるときついかな」 「あ、すまん!でも、嫌とかじゃないんだ!なんかこう、緊張するっていうか……いやそれも違うな……」 「もういいよ、分かったから」 「分かってない!」 木兎くんがまたうんうんと唸り出したところでチャイムが鳴った。正直ほっとした。 さっさと席について授業に集中しようとするけど、さっきの木兎くんの言葉が頭を離れない。私はいつの間に、木兎くんにあんなに苦手意識を持たれていたのだろうか。思い返しても理由が特に思い浮かばないって、逆に私って人としてどうなの? こんなんじゃ、間違っても好きなんて言えないなあ……そんな風にモヤモヤしていたら授業なんてあっという間に過ぎ去ってしまった、んだけど。 「名字、分かったぞ!」 授業が終わった瞬間に木兎くんが私の目の前までやって来た。え、さっきの話まだ続けるんですか。そんなのただの止めなので、できれば勘弁してほしい。 「や、もういいから、」 「俺、名字のこと、好きだ!」 「この話やめ、……え?」 思わず、木兎くんの顔をまじまじと見てしまった。いつもの、自信に満ち溢れた顔。その表情が今、私に向けられているというだけで嬉しいのに。木兎くんはそれ以上のことを言った気がする。 ヒューヒュー、なんてクラスの皆が囃し立てるのでようやく現状を理解した。告白、されたのだ。分かった瞬間に顔が熱くなってくる。 「だーもう、うるさいお前ら!あっち行け!」 皆が騒ぐからなんだか返事どころではなくなってきた。やっぱり木兎くんは人気者だなあ、なんて、他人事みたいに考えた。でも、このままでは休み時間が終わってしまう。 そうしたら、次の休み時間には私から木兎くんのところへ行こう。「私も好きです」って、伝えよう。 とりあえず今は、皆に煽られて赤くなっている珍しい木兎くんを見ていたい。これから、もっとたくさんの木兎くんを見たいと思った。 2014/08/14 |