双子と云っても、全く同じってわけじゃないんだなあ。思わず口に出していた。当たり前だよ。呆れたように笑ったのは里綾だ。綾人の方はオレの話を聞いていたのかすら怪しい。

だって気になるじゃねーか。オレが取り繕うように云うと、ますますおかしそうに里綾は笑った。
里綾は本当によく笑う女の子だ。人当たりもいいし、案外ノリもいい。学年トップクラスのゆかりッチと並んでも引けを取らないくらい可愛いのに、嫌みがない。不思議なことに、彼女には恋愛感情というより、友人でいたいという気持ちの方が強く働いた。なんて贅沢な、と自分でも思う。

それに対して、綾人の方は自分から話しかけてきたりは滅多ないし、ほとんど笑わない。というか見たことがない。里綾が云うには、「たまには笑う」そうなのだが、気を許した双子の妹をもってしてもそうなのだから、オレが綾人の笑顔を拝めるのはずっと後になりそうだ。もしかしたらそんな日は来ないのかもしれない。
ちなみに、一緒に話を聞いていたゆかりッチがどことなく残念そうな顔をしていたのを、オレは勿論見逃していない。難攻不落の岳羽ゆかりも、ミステリアスなイケメンには弱いんだな。冗談のつもりで云ったのに、「馬鹿じゃないの?!」と本気でキレられたのには参った。いや、まさか、本当にゆかりッチの好みだったとはね。意外すぎてそれ以上突っ込めなかった自分にガッカリする。
「そんなんじゃないから!」仮にも学年トップクラスの好反応を前に、噂のイケメンは表情も変えなかった。


相変わらず聞いているのかいないのか、興味なさそうに綾人は里綾が売店で買ってきたというポッキーをぱきぱきと食べている。我関せずの綾人のスタイルは、やはり里綾と全く異なっている気がして、やっぱり双子と云っても同じじゃないんだなあ、と感心せずにはいられなかった。

それにしても新学期早々学校中の話題をかっ攫った転校生ツインズは、転校して間もないというのに、もうすっかり学校に馴染んでいるようだった。
ふたりでいるから余計なのか、彼らの存在はとても自然だ。当たり前のようにそこにいて、違和感がない。だからオレも彼らが今月転校してきたばかりだということをすっかり忘れて、春休み中の課題について綾人に訊ねてしまったりするのだ。それは流石に分からない。そう答えた綾人の表情はいつもと変わらなかったけれど、いつもより少しだけ口調が柔らかい気がして驚いた。呆れたのかもしれない。

「課題がどんなかは知らないけど…」オレの白紙の用紙にちらりと視線を向けた綾人に、オレは(お?!)と思った。この流れなら間違いなく「手伝うよ」という申し出だと思ったのだ。だが意表を突いて(少なくともオレはそう思った)綾人の口から出た言葉はそんな優しい言葉ではなかった。
「まあ、白紙で出す勇気って必要だよね」

本気なのか冗談なのかさっぱり分からない助言にオレは呆気にとられる。綾人が僅かに口元を緩めたように見えたのは気のせいだったのだろうか。

「てゆか、お前ポッキー食い過ぎ!ソレ、里綾のだろ?!」
「大丈夫。里綾のものは俺のもの」
「意味分かんないんですけど?!どこの独裁者だよお前!ってか里綾!お兄さんの云ってること無茶苦茶ですよ?!」
「うん、知ってる」
「れ、冷静だねえ…」
「でも別にいいよ。綾人、ポッキー好きだし」
「え、綾人のために買ったの?!」
「っていうか…餌付け?」
「ひどい妹だよね」
「ハハ…そーですね…」


オレが最近思うのは、何故同じクラスに同時期の転校生、しかも双子を編入させてしまったのかってこと。
そりゃネタ的には面白いけど……え、まさか…いや、流石にそれはないよ、な?


(ないって云ってよ、誰かー!)







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -