「ゆかりちゃん、里綾ちゃんの…聞いた?」
「うん、聞いた」

どちらから云うでもなく、私と風花は帰宅後一緒に夕飯を食べに出掛けた。場所は月高の生徒が帰りに寄らなさそうな、駅から少し離れたところにあるファミレス。
私たちはそれぞれ注文したものを殆ど会話らしい会話もせずに食べ終わり、何度目かのドリンクを持ってテーブルに戻ってきたところだった。

「もしかしたら内緒にしているだけなのかなあって思ってたんだけど…」
「本当に、まだだったとは思わなかったよね…」

風花はカルピスを、私はピーチアイスティーを同時に口に含む。話しているのはもちろん、里綾と、真田先輩のことだ。

お節介だろうからと私も風花もあえて口にはしなかったのだけれど、いつになったら付き合うのだろうと、ずっとずっとやきもきしながらふたりを見ていた。それがようやく、今日、ついに、ふたりの間に付き合うという話が出たと里綾本人から連絡が来た。ようやく、だ。
これで私と風花の心配事もひとつ減ったな、と喜んでみたのも束の間。いつだって3人一緒だった私たちの関係が、これで終わりかもしれないと気付いて落ち込んでいる。これが現在。
そりゃあ彼氏が出来たらそっち優先するよね。ストローから口を離すと、今度はふたり同時にため息が洩れる。あれ、私たちってこんなに心が狭い人間だったんだ?友達の幸せを手放しで喜んであげられない、なんて。

「ゆかりちゃん」
「ん?」
「私、何だか泣きそう」
「え?!いやいや、やめてよ!風花が泣いたら私も泣くよ!」
「でもこれって…なんの涙だろうね」
「しらないよ…」
「人間って、悲しくて泣くより、悔しくて泣くことの方が多いんだって」
「悔し…くはないと思うんだけど…」
「私も」
「じゃあ…何で泣きそうなんだろ…?」
「うーん」

風花は首を捻り、私はストローを指で弄びながら視線を外へと向ける。

いつだったか里綾が云っていたっけ。悩んでも仕方のないことをいつまでもぐだぐだと悩んでいる暇があったら行動に移せばいいんだよ、って。今この場合の行動って何だろう。そもそも、私たちが何をしたいのかも分からない。
風花も同じことを考えていたのか、難しい顔でカルピスの入ったグラスを見つめていた。

「私、思うんだけど…」
「どうぞ」
「私とゆかりちゃん、ふたりが顔を合わせて答えが出ないんだよね?」
「今、まさにね」
「それって、足りないから…じゃないかな」

顔を上げた風花の眸をじっと見つめて、私は頷く。風花が何を云いたいのかはすぐに分かった。私は鞄を引き寄せて携帯を取り出し、リダイヤルから里綾の名前を探し出す。迷わず通話ボタンを押し、耳に当て、里綾お気に入りの呼び出し音が鳴り出すのを待った。

―あ、ゆかり。どこにいるの?

まるで緊張感のない里綾の声を遮るように、私は早口で要件を告げる。




「至急、ファミレスに集合!」








(ファミレス?なんで?)
(駅前じゃない方だからね!)
(えっ、なんでそんな遠いとこ…)
(いーから早く来る!)
(は、はいっ)






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