「学校に来ると、わたしたちもちゃんと学生なんだなーって思うよね」
「ちゃんと…っていうか、私たち一応本職学生だからさ」
「でも、タルタロスじゃない学校を見るの、久し振りだね」
示し合わせたわけではないのに寮を出るのが同じだった私たちは、珍しく3人揃って登校をした。ひとりで登校するよりずっと時間はかかってしまったけれど、いつもより少し早く出たから時間には余裕がある。普段は気にならないようなことでも、3人で歩くと色々なことに気が付くから不思議だ。
まだ暑いよね。でももうすぐ秋になっちゃうね。秋って云えば文化祭に修学旅行かあ。2学期ってイベント盛り沢山だよね。楽しみだよね。
3人寄れば文殊の知恵。…いや、姦しい、かな。
「あー!コンビニのスイーツ、新しいの出てる!」
これで何度目だろう。里綾ちゃんが立ち止まり、駅前のコンビニを指差した。
「あ、ホントだ!風花ー、買っていっていーい?」
先を歩いていたゆかりちゃんも戻ってきてコンビニの入り口に掛かっている垂れ幕を見つめる。
「いいけど、いつ食べるの?」
苦笑しながら私もコンビニを覗き込んだ。結局、私も誘惑には勝てない。
「学校着いてすぐ食べればいいよ」
「教室入ってすぐ、だね」
「そんな時間ないと思うよ?」
「じゃあひとつをみんなで食べよ」
「ほら、買うなら早くー!」
「え、でも私クラス違うから一緒には食べられないよ。ふたりで食べて?」
「大丈夫!」
渋る私の両脇にゆかりちゃんと里綾ちゃんが立ち、私の腕をそれぞれ掴んた。私の制止なんて全くお構いなしのふたりに引っ張られ、コンビニに入っていく。
軽快な音楽に迎えられながら私は、予鈴時間ギリギリに走って登校することになるんだろうなあと予感していた。