職員室前に貼られた試験結果を一通り眺め、私は嘆息した。全くあの兄妹には驚かされるな。思わず呟くと、隣でやはり第2学年の結果を見ていた明彦が「全くだ」と感嘆にも似た声を漏らした。

「あんな状態だったのにな…」

ため息とともに云ったその言葉に、珍しく柔らかさが含まれていることに気が付いて明彦を見る。呆れたような表情で、それでも嬉しそうに彼は笑っていた。
明彦とはそれなりに長い付き合いになるが、こんな表情は見たことがない。

「どうした?」

私の不躾な視線に気付き、明彦が不思議そうな顔をする。どうした、と訊きたいのはむしろ私の方だ。そう思ったけれど、いや、とだけ云って私はまた試験結果に視線を向けた。
一番上に瀬田綾人の、その下に瀬田里綾の名前が並んでいる。その点差は、さほどない。

いつか綾人に勝ちたいんです。前回の試験結果が貼られた時、彼女はそう云っていた。じゃあ、微力ながらその手助けをしようじゃないか。私が云うと、彼女はとても嬉しそうに笑っていた。
今回は私のせいでその約束が果たせなかったけれど、決して忘れていたわけではないんだ。なんて、都合が良すぎるか。

今回の試験準備期間は殆ど部屋に籠もっていたから、彼女がどんな風に準備期間を過ごしていたのかは分からない。何度か私の部屋を訪ねてきてくれたが、結局、私は一度だって扉を開かなかった。
優しい彼女だから、きっとそんな私に対しても以前と変わらず接してくれるのだろう。大丈夫ですよ、と笑ってくれるのだろう。
けれど、その言葉は真実だろうか。本当に彼女は大丈夫だったのだろうか。ずっと変わらず、笑っていたのだろうか。

或いは、隣に立つ友人ならその答を知っているのではないかとふと思った。







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