部屋に戻ろうと階段を上がっていると、自動販売機に用があったらしい綾人と鉢合わせた。綾人はわたしに気付くと、ちょうど良かったと少しだけ口端を持ち上げる。

「里綾、なんかお菓子持ってない?」
「お菓子?」

綾人が見た目に反してかなりの大食いだとか、甘いものには目がないとか、そんなことは今更驚くようなことではないけれど、どちらかと云えば夕飯を食べるような今の時間にまでお菓子を欲しがるなんてそれはさすがにどうだろうと思った。妹として、綾人の食生活が心配になる。ただでさえ最近グルメキングとか云う謎の人物に付き合って色んなところに外食に行っているらしいというのに。

「お腹が空いてるならご飯食べに行こうよ」わたしが誘うと綾人は「俺が食べるんじゃないから」と苦笑した。わたしが何を心配しているのか気付いたらしい。

「綾人が食べるんじゃなければ誰が食べるの?」
「そろそろ来る頃だと思うんだよね」
「来るって…何が?」
「小さいの」
「小さい…?…猫?」

わたしが訊ねると、「そう、ちょうどそんな感じ」と綾人は頷いた。そんな感じって何だろう?気になるような、聞きたくないような。
「それってわたしも会える?」訊ねると、「そのうちね」と返ってきた。

鞄の中にはちょうど放課後に風花と一緒に作ったカップケーキが入っている。猫ってカップケーキ食べられるのかな?よく分からなかったけど、鞄の中から2つカップケーキを取り出して綾人に手渡した。ちょっとだけ綾人が嬉しそうな顔をする。

「晩ご飯の後だからね」
「分かってるよ」

渋々といった感じで了承した綾人と晩ご飯を食べに行く約束をしてわたしはまた階段を上った。
それにしても、何が綾人のところに来るんだろう。

お化け…とかじゃないよね。







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