「岳羽さん…!」


人が吹き飛ばされる瞬間を初めて見た。やけにゆっくりと過ぎていく躰をただ見つめる。思考が付いていかない。何かしなくてはいけないと思うのに、何をしたら良いのか分からない。どさり、と嫌な音を立てて岳羽さんの躰が地面に落ちた。
「岳羽さん!」
気を失っているのか彼女はぴくりとも動かない。駆け寄ろうとして足がもつれた。その場に膝をつく。

地面に突いた手のすぐ側に銃が転がっていた。
岳羽さんがさっき自分自身に向けて構えていた銃だ。とくん、胸が鳴る。まるでわたしを呼んでいるようだ。綾人の制止する声が聞こえる。だけどわたしの意思とは関係なく、手は銃に吸い寄せられるように伸びていく。


「里綾!」

珍しいな、と頭の隅でぼんやりと思った。綾人があんな風に必死に声を張り上げることなんて滅多にない。それどころか、たぶん今までに一度くらいしか聞いたことないんじゃないかな。一度…いつのことだったろう?確かその日も、こんな風に…。


「里綾…!」


ひんやりと冷たい銃は何故かとても手に馴染んだ。そうすることが分かっていたみたいにわたしはそれをこめかみに当てる。



「ペ、ル、ソ、ナ…」



そして世界は暗転した。







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