約一年ぶりにアシハラへ戻った。
新しい家の門扉を開き、「ただいま」と言う。

この瞬間をどれほど待ちわびたのだろう。
迎えてくれた母の姿に涙が出そうになったが、彼女がしっかりと抱える見慣れぬ赤ん坊の姿によってすべての涙が引っ込んだ。血の気も引いた。

「あなたの妹よ」…らしい。
母よ。私の旅立ちにやたら協力的だったのはそういう訳か。
脱力する私だったが、新しい家族である妹は文句なしに可愛い。
彼女の名はアシハラの土地神から取ったらしい。
嬉しそうに説明する父を、訳もなく殴りたくなったがなんとか耐える。

ジロチョウ様に生還の報告をした。

聞けば、妹の名の由来になった土地神の祠を、近々街の近くへ移動させるらしい。
それに伴って、ささやかなお祭りを開くそうだ。
なんか流れで巫女役を命じられてしまったが…よかったのかな。私で。

その後は強行軍だ。
来る日も来る日も、祭りのための下準備で駆り出される。
旅よりも疲れたと思いながら、祭りの当日を迎えた。

…そして。

当日にやってきた大きな船から降り立った一同を見て、私は目を見開くことになる。

気弱そうなお兄さん。
ヘンな喋り方の女の子。
帽子をかぶった、ガラの悪いお兄さん。
全身真っ黒い、恐ろしげなおじさん。
白い服を着込んだ、清楚なお姉さん。
そして勝気な瞳の、赤い髪のお姉さん。

各地で私が出会った『親切な人々』が勢ぞろいしていたのだ。
彼らは巫女姿の私を見つけ、一斉に声を揃えて叫んだ。

「また会えたね」、と。
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