「食堂に集った諸君!今日は"セツブン"という催しものを開催する!」 唐突に切り出した号令に、坐って歓談していた面々は目を丸くした。 右からカノンノ、カイル、リアラ、ロニだ。 若干偏ったメンバーではあるものの、素直な奴らが揃っている。 「セツブン?なに、それ?」 「俺もすずから聞いた程度なんだけど。なんでも、立場の弱い者を『鬼』と罵りながら全力で豆をぶつけ、家の敷地内から追い出す行事らしい」 「そんな物騒な行事じゃありませんよ!」 カノンノの質問に即答した俺へ、ロニが目を剥きながらツッコミを入れる。 …あれ。そうだったっけ?確かにそう聞いたのに。 訝しげに首を傾げる俺と、「えっ、違うの?」と尋ねるカイル。 板ばさみになったロニは、若干おぼつかない口調で"節分"の説明をした。 …けど、途中面倒臭くなったので聞き逃したことは、言うまでもなく。 「つまり、ロニを『鬼』と呼んで豆をぶつければいいのね?」 「リアラ、お前は何を聞いてたんだ」 「へえ、楽しそうだね!ロニ、頑張ってよ」 「カイル…お前まで…」 涙ぐんだまま肩を落とすロニ。 カイルが面倒臭そうに慰めているのが、尚痛々しい。 俺はロニの肩をぽんと叩いて、その頭に鬼のお面を被せた。 「大丈夫だよ、ロニ。本物の豆は使わねーからさ」 「イリヤさん…」 それでも、俺が鬼役なんですね。 そう言って項垂れるロニは、相変わらず敬語だった。 …なんでだろうな。俺のほうが年下なんだけど。よく分からん。 「使うのは、これ。俺とフィリアが栽培した『マメモドキ』だ」 「俺の拳よりでけえ!!」 「で、素手で豆投げたら疲れるからな。ハロルド特製の『豆ランチャー』を用いる」 「ロケットランチャーでしょう、それぇ!」 喚くロニを他所に、地面から腰程度の長さを誇る『豆ランチャー』を一人ずつに配布する。カイルは大喜びだ。ハロルドのセンスは少年心をくすぐるモノがあるからな。なんとなく分かるよ、俺も。 「ちょっ…タイム!待ってください、イリヤさん!そんなモンで撃たれたら俺、死んじまいますよ!」 「ロニなら大丈夫よ。たぶん」 「リアラは黙ってろ!」 にこにこと笑うリアラを黙らせ、ロニが詰め寄ってくる。 うっわぁ、大の男の涙目って引くわぁ。鼻水出てるし。うわぁ。 「…大丈夫だよ、ロニ。俺がお前を見殺すわけないだろう?」 「イリヤさん…!」 「だから、ほら。リアラとカノンノ呼んだじゃん。キュアれる、リザレクれる」 「イリヤさあああああん!!」 キュアれる、は『キュアが使える』。 リザレクれる、は『リザレクションが使える』の意である。 「よぉっし!いくぞ、ロニ!!」 がちゃこん、とマメモドキを装填する音が響く。 途端、鬼の面を被ったロニは顔を蒼くさせた。当然だろう。だって彼の視線の先には、真っ黒い銃口が三つもあるんだから。 「…うし。全弾、発射」 「やめろおおおおおおおッ!!」 |