※時期謎
(アルビオール無し、名前同行、イオン同行、短髪ルーク)
※一応ギャグ。暗くないです




目の前のコレは、一体なんなのでしょうか。
「……」
「………」
「な、なんですの?文句があるなら、素直におっしゃいなさいな…!」
全員が丸く集まったその中心に鎮座する謎の物体。
ただ一人狼狽するナタリアと、アニスの懸命な努力で引き離されているイオンくん以外の全員がその物体を凝視しています。
…なんか、目が痛くなってきました。

「…ええと、ナタリア?」
沈黙に耐えられなかったのは、我らが苦労人ガイ・セシル。
偏頭痛でも起こしているのでしょうか。眉根を押さえながら、非常に辛そうな顔をしています。

「これは一体なんなんだい?」
「フルーツミックスですわ」

胸を張られました。
私はいったいどうしたら良いのでしょうか。だってこれ…

「嘘つかないで下さい、コレはどっからどう見ても暗黒物質ですよ」
「全くですね。面白い冗談です」
「あはっ、大佐も名前も容赦無さすぎ〜」

無表情の私と輝かしい笑顔のジェイドとアニス。
ナタリアの涙ぐんだ目が睨みつけているのも、ティアやイオンがおろおろと目線を泳がせているのも気付いていましたが当然のように無視します。
どうでもいいですからね。

「だ、だって仕方ないじゃありませんの!
 ただ焼きリンゴは美味しいものだと聞いて…わ、わたくしなりに頑張った結果なのですわ!」
「炭が?」
「焼死体がですか?」
「もうお前ら勘弁してやれよ!?」

泣きそうなナタリアを見ていたら楽しくなってきたのですが、ルークに肩を掴まれて泣訴されてしまったので諦めてあげましょう。感謝するといいです。

「ま、まあ失敗してしまったものは仕方ないわ」
「そうですよナタリア。失敗は次に生かせればそれでいいんですから」
ティアとイオンくんがナタリアのフォローに入って必死になだめているのですが、彼女の機嫌が直っても目の前の惨劇は直りません。
どうするんですか、今日の夕飯。

「しょーがないなあ。ここはこのリトルビッグシェフ、アニスちゃんが適当に…」
深々と息をつきつつ、アニスが言葉を継いだのですが、それを「あっ!」と大変よろしくないノリで遮った者がいました。
一同の目線が再び声の主…ナタリアに集中します。

「無理ですわ。実は先ほど使ったフルーツ類が最後の食材だったんですの」

ちょっと待てやゴルァ。

この前の買い物当番はルークですね、とはジェイドの弁。
「「ルーク!!」」
「ひっ」
今度ばかりはティアもキレました。
矛先が一変して自分に向いたことに驚いたらしいルークは、先ほどのナタリアのように若干涙目になっています。よく泣く王族ですね。

「正直に話して。…忘れたのね?」
「わ、忘れたっつーか。武器と防具新調したら、金がなくなって…」

金が……え?

「1020ガルドですの」
「うわぁっ!」
「ギャアア!!」
すぐ足元からの不意打ちに思わず仰け反り、隣のガイの肩を掴んでしまいました。
案の定ガイは絶叫し、足を滑らせ、放置されていた暗黒物質に顔面から突っ込み。…そしてピクリとも動かなくなりました。

「名前ちゃん、驚きすぎですよ」
「イオン様…ツッコむとこが違いますよぅ」
「それよりもミュウ、1020ガルドとは一体?」
苦笑するイオンくんと項垂れるアニス、我関せずなジェイド。
私の態度で若干傷ついていたらしい小動物・ミュウはジェイドの言葉に気を良くしたようで、「お財布の中身ですの」と元気に告げる。

「ご主人様が買い物した後、お財布の中が空っぽで…
 でも、ボクが一生懸命集めたですの!これでグミが買えますですのっ」

「ゴメンナサイ」
無邪気に飛び跳ねるミュウに何を刺激されたのか、死人のような顔でルークが頭を下げました。
「大丈夫ですよ、ルーク!失敗は次に…」
慌ててイオンくんが再びフォローに入りますが、彼自身がその続きを遮ることとなってしまいました。
本人の意思と全く関係なく鳴ってしまった腹の虫。
イオンくんは恥ずかしそうに笑って、ごめんなさいと頭を下げます。なんて哀れなんでしょうか。

「もー、ルーク最低っ!イオン様にまで空腹を強いるなんてっ」
「だから悪かったっつってんだろ!」
「ルーク、大きな声を出さないで。ミュウが怯えてるわ」
「………はっ!お、俺は一体…?」
「ガイ…大丈夫ですの?」

空腹を苛立ってるのか知りませんが、全員の気が立っているようですね。
幼稚な口喧嘩に、隣に立つ軍人の笑顔が引き攣るのを感じます。
ま、まずい。
このままでは真っ先に、私の頭蓋骨が握りつぶされる!

「あああ、もう!いい加減にしてくださいよっ!」

ジェイドの右腕が持ち上がるのと同時に、私の出せる全力の声で周囲を沈めます。
静かに下げられるジェイドの右腕。舌打ちが聞こえたのは幻聴ということで片付けましょう。

「とりあえず、食べ物は現地調達!近くのウルフでもぶっ殺して肉を剥ぐ!」
「グロい言い方すんなよ」
「そして、折角バチカルが近いんです。
 ルークが親バ…もとい息子想いなお母様に媚び諂って物乞いすれば一発です」
「嫌な言い方すんなよ!」

あれ、空腹で気が立っているのは私のほうでしょうか?

「それに!母上には散々小遣い…小遣い?貰っちまってるし。今更できねーよ」
「えぇ?でも1000ガルドちょいじゃ禄に買い物できないよぅ」

恥も外聞も捨てちゃいなよ、と唇を尖らせるアニス。
一方ルークはといえば、恥や外聞よりも親愛と罪悪感の狭間で揺れている様子でした。
…一応冗談だったんですけど、まあ面倒臭いので言わずにおきましょう。

「何か、ないかしら。
 誰にも迷惑をかけなくて、バチカルでできて、1020ガルドでなんとかお金を増やす方法…」

あ。と、ジェイド以外の全員の声が重なりました。
「…あるじゃないか」
呆然と呟くガイ。そうですね、ありますね。
バチカルにしかない、簡単にお金を増やす方法が。


prev next
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -