「え、巽完二についてですか?」
昼休みに教室までやってきた花村さんご一行は、
なんの突拍子もなく、完二について何か知らないかと尋ねてきた。
「いや、あんまり学校来てないっていうし、知らないならいいんだけどさ。
一年生からの評判とかはどうなのかなぁって」
フォローするように言うのは、確か里中千枝先輩。
隣の人は見たことあるな。天城屋旅館の…雪子先輩、だっけ。
で、その隣の人はー…
「ああ、こいつ、鳴上悠。知ってんだろ?転入生だよ」
「よろしく」
「あー…なるほど、貴方がですか。初めまして。春日部美咲です」
それなりに深く頭を下げると、鳴上さんも頭を下げた。律儀な人だ。
「特技は声帯模写です」
「初めて聞いたぞ、それ!?」
花村さんのツッコミは今日も冴え渡っていますね。なによりです。
確かに披露したことはありませんが、本当に得意ですよ。
老若男女すべてカバーします。一人でアニメ録れます。
「『どうも、こんにちはー!ジュネスは今日もお客様感謝デーっすよー!』」
「うわっすげー!完璧に花村じゃん!」
「なんつー無駄なスキルだよ!犯罪以外に使えんのかそれ!?」
む。
確かに無駄ではありますが、花村さんに言われるとむかつきますね。
大事なことなのでもう一度。
花村さんに無駄とか言われると、むかつきますね。
「では完全なるりせちーボイスで『陽介、大好き!』と言っても無駄と言えますか」
「え、…ッマジで!?」
「ケッ。やりませんけどねー!」
精々悔しがればいいです。
閑話休題。
「それで?完ちゃんのことですよねえ。何が聞きたいんです?」
「「「「完ちゃんっ!?」」」」
「…?私が幼馴染って知ってて声かけたんじゃないんですか?」
一様に目を剥いた先輩たちを見て、首を傾げる私。
一年生まで轟く名を持った四人ですが、なるほど全員本質が似てるみたいですね。
よかったですね、花村さん。まともそうな男友達ができて。
実はおこがましくも早紀さんに代わり、少し心配していたんですよ?
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