いろいろ割愛。

うん、もう語るのも無理。疲れた。
なんか途中事件がどうこうとか険悪なムードになったものの、
現在は問題なく…ああいや問題しかないんだけど、ちゃんと進行中です。

ぺるそなとかしゃどうとか意味わかんないこと言ってたけど、
雪子さん小説でも書いてるのかな。ちょっと意外。


「…あー」


手元にある赤い印のついた割り箸。
私が王様かあ。どうしようかな。
はっちゃけた命令とかはみんながやってたし、この場にいる常識人を代表して
節度ある命令をするべきだよね。
だいたい私、そんなに巫山戯たキャラじゃないし。
滅茶苦茶普通だし。
チッスとか肩車とか、そういう際どい命令とか恥ずかしくてできないもん。
うん。


「3番と4番がホテルのベッドで一緒に回ってきて。裸で」

「自重しろ馬鹿ァァアアアアア!!」


頭頂部に落とされた花村さん渾身のチョップ。
拳骨でないのは後輩女子に対する最低限の配慮を駆使した結果だろう。
ふふふ。そういうところが好きです、花村さん。


「お前完璧に酔ってるだろ!気持ち悪ぃんだけど!?」

「やっだなあ。酔ってないっすよぉ」

「美咲ちゃん顔真っ赤だよ!?ほ、ほら横になったほうが」


静観していたはずの千枝さんがあたふたと話題を逸らそうとする。
3番か4番かは知らないけど、当たったんだろう。
さっきの『膝に座る』といい、すごく不憫な人だ。


「はい、はい!クマ3番!4番は誰ぞねー!?」

「いやあああああああ!!」

「美咲!今からでも遅くねえ、変えてやれ!里中のために!」

「ええー…」


さっきクマに変えんな王様と叫んだくせに、我儘な人だ。
うん、でも千枝さんが嫌な思いをするのは可哀想だな。
変えてあげようじゃないか。


「じゃあ、5番がこの場で一番大事な人に抱きつく」

「…ああ、うん…そんくらいなら…」


若干感覚が麻痺した様子の花村さんが周囲を見渡す。
当の彼の手には『6』の文字が書かれた割り箸があった。
しばらく鎮まった後、立ち上がったのは久慈川りせ。5番の割り箸を握っている。


「えへへ…いいのぉ?私にやらせていいのぉ?」


ぐらんぐらんと頭を揺らすたびに、二つに纏められた髪が一緒に揺れる。
頭が大きく見える髪型なだけに、りせの異常は際立って見えた。
やばい。
鳴上さんの貞操が危ない!
全身に有った熱が、冷水を浴びせられたように一気に冷えた。

正常を保っている千枝さんに花村さん、直斗に至るまで全員が鳴上さんを見ている。

当の鳴上さんは完二をパシって延々と何かを飲んでいて、
りせのほうには我関せずといった様子。ああ御免なさい、先輩!


完全に意識と視線はそちらに注がれ、自らの身体にはノーマーク。
全く意識していなかっただけに、その体温はすごく意外で衝撃的だった。


「ぎゅー」


私の隣に座り、首に腕を回して、髪に顔を埋めてくるりせ。
意識ある全員の目が丸くなった。
楽しそうに笑う雪子さんの声だけが反響している。


「一番だいじなひと、でしょ?だから、美咲〜」

「え」

「わたしの、さいしょのともだちだもん…だいじだよ…えへへ…」


がくん、とりせの身体から力が抜ける。
どうやら寝てしまったらしいんだけど、それよりも。

うわあ。
どうしよう、すっごい嬉しい。
予想外だっただけに、余計に嬉しい。

寄りかかられて、すごく重いけど。

幸せだなー。

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