ND2014。

ユリアの聖誕祭を間近に控えたダアトの街は、
いつもの質素な雰囲気をまばらに華やがせて賑わっている。
商店街の者らによれば、稼ぎ時なのであろう。

浮かれている彼らがまったくもって嘆かわしい。

始祖ユリアの聖誕祭ともなれば、私の傍らにいる導師イオンを始め、
ローレライ教団の重鎮たちが続々と民衆の前に赴かねばならないのだ。
当然のように護衛の騎士たちが多数、これでもかというほど動員される。

血で汚れた騎士のひしめく中での祭りなど、どこが華やかなものか。

楽しむ民衆のうち、たった一人が妙な行動を起こしでもしてみろ。
にこにこ笑っていた騎士たちの顔は一変し、
その一人を駆逐するために殺到するであろう。

あーあー、もう面倒臭い。正直勘弁して頂きたい。

「…導師イオン。時間が押しております」
「わかってます」

数日に一度行われる、導師による町内闊歩。
穏やかにたおやかに微笑んで信者や民衆に手を振るこの小さな少年は、
その笑顔を崩すことなく、私に向き合って微笑みます。

ぞっとしますね。

誰かが妙な行動を起こした時、
表情を一変させるのは祭りの時の騎士だけじゃない。

教団きっての人格者と誉れ高い、目の前の最高責任者様は、
その清らかな外面の奥に、凄まじく醜悪な本心を燻らせているのです。

「愚者どもが」

イオンを拝むように立ち並ぶ民衆の中で、そんな囁きが風に乗ります。
私は内心堪え性の無い奴だと侮蔑に似た感情を抱き、
風下にいた幼い導師守護役は聞きなれない単語に首を傾げました。

他の導師守護役の姿はありません。

護衛が少ないということは、暗殺の危機も当然強まるわけですが。
自らの身を危険に晒すことも厭わず、彼は私達に仕事を強要しているのです。

"護る"ことの経験がない、この私に。

"護る"ことにしか自己価値を見出せない、そこの幼子に。

本当に性格の悪い子供です。何が教団きっての人格者ですか。

ここまで酷評しておいてなんですが、
私ユノ・リーランドは導師イオンに悪意を持っているわけではありません。
かといって好意、恩義を抱いているわけでもありません。

興味がないのです。

私の隣にいる彼が、唐突に木偶人形になっても気付かないのではと、思うほど。
私は物事に執着できない。私は物事に関心を持てない。

病気だとすら称されるこの悪癖は、一体いつから私に取り憑いているのでしょうか。

興味ありませんけれど。




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