「折角のクリスマスに、お前は何をしてるんだ!」

日課の買い物から帰ってくるなり、絶叫して蹲るのはご存知初音ミク。
いつもの慇懃な言葉遣いがぶっ飛んでいるのは、
こいつがニコ中であるが故かニコ出身者(?)であるが故か。

とにかくいつも通りのノリで、絶叫した。

俺はその様子を雑巾がけの体制のまま冷静に見守り、
冷静に立ち上がり、ミクをスルーして、冷静に部屋の扉を閉めて。
そのままもとの位置に戻って、雑巾をバケツの上で絞って。


「大掃除」


と返事をする。ちなみにミクの絶叫からの時間は約一分ほど。
遅い?知りません。
この子の奇行にいちいちツッコミを入れるほど俺は寛容じゃないんです。


「いえいえいえ。奇行はマスターのほうですよ。え?何してるんです?
 カレンダー見てください、12月25日!クリスマスですよ!?」
「何言ってるんだよミク。12月25日。大晦日まで一週間切ってるんだぞ」


待ち合わせは十分前、旅行の準備は一週間前。
何事も"遅れる"ということがあっちゃならない社会人である。
大掃除だって一週間前に済ませるさ。

「これだから彼女いない歴=年齢の男は嫌なんですよっ」
「なんだとゴルァ!!」

暴言を吐きながら、家主の俺をゴミと間違ったような目で見つめながら。
ミクは買い物袋を床に置くと、雑巾をかける俺の前で仁王立ちした。
なんか傅いてるみたいで不愉快である。
このご主人様、普通にパンツ見えてるけど。

「先程、お隣のお嬢さんに会ったんです」
「お隣?」

確か女子高生が住んでいたような。
朝出かける時間も被らないし、学生とは帰る時間も勿論違う。
ほとんど顔を合わせたことはないけど、結構可愛らしい感じの子だったような。

「クリスマスは恋人と蜜月を過ごすとかなんとか言ってました」
「ミツゲツ…」

なんともいやらしい言葉の響きである。
恋人。恋人ねえ。
欲しくないわけじゃないし、正直可愛い彼女とかすっげー欲しいけど。
そこまで切羽詰ってないというか、貪欲になれないのも事実である。

え、つか、何?
今その話題出すとか、この小娘まさか。

「ミク、お前、彼氏欲しいのか?」

ぶっ飛ばされた。
正確には蹴られた。サッカーボールでも蹴るように、爪先で、顎を。


「マスターのバカ!!」


亀のようにひっくり返った俺の腹をげしげし蹴りながら、初音ミク。
涙混じりというかなんというか、とにかく不愉快そうに。
バカバカと連呼しては、俺を蹴り続けた。

意味がわからん。なんなんだ、こいつ?




← 


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -