「爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ」 「ルーク、落ち着いてください。顔、すげーやばいです」 映像化できません。なんです、それ。般若かなにかですか。 剣を扱う握力でかまくらを握るものですから、見事にじりじり削られています。 ごめんなさい、これ作った人。 聖夜クリスマス。 ほぼ一年中雪に覆われたケテルブルクも、この夜だけはその雪の意味合いを変えます。 美しい電飾に照らされた銀は、昼も夜も美しく。 そんな中を愛する者と歩むことは、彼らにとって至福と言えるでしょう。 ええ、彼らにとってです。 私達には無縁の世界ですよね、ルーク。 「うう…俺だって、俺だってティアと…でも、うぅ、っ…ぐず」 「ここで泣かないでくださいよ…」 ただでさえ不審者なのに。 不審度レベルがうなぎのぼりです。もうすぐカンストします。 卑屈モードになってのの字を書き始めたルークの背を軽く叩きつつ、 視線を元の位置に戻します。 楽しそうに公園内の装飾を眺めるナタリア。 それを微笑ましげに見つめるアッシュ。 あら。なんでしょう、この気持ち。 黒くて暗くてきたなくて汚らわしくて、それでいて憎悪とは違う、この気持ち。 なんでしょうか。 憎悪とは違うはずなのに、あいつらが憎くてたまらないのですが。 「ユノは俺の気持ち、わかってくれるよな?」 「いえ。女性を誘えなかったチキン野郎の気持ちはわかりません」 「クリスマスなんて、赤い服のガイが窓から入ってくるだけの日だよな?」 「私があなただったら迷わず白光騎士団を呼びました」 「そしてちょっと頬撫でられて、寝顔眺められるだけの日だよなっ!?」 「ちょっと待ってください!え、マジですか?あの人マジでそっちの人なんですかっ!?」 そういう扱いはしてましたが、あくまでも冗談だったのですよ! しかしルークの話が真実ならば確実にアウトです! 頬か額にちゅーくらいは絶対してるでしょう、あの男! 末恐ろしい。 ファブレ家の防犯対策はいったいどうなっているのでしょうか。 「私のクリスマスといえば、やっぱり仕事ですね。 やっぱり教団は聖夜祭とかしますから、その警備とか警備とか警備とか」 「…なあ、ユノってもしかして可哀想な奴なのか?」 「なッ…な、なにを言うんですかっ!」 確かに真っ当に楽しんだことはありませんけど、 ルークに可哀想とまでは言われたくありません。断じて違います。 「だいたいですね。あのサンタとかいうおっさんの服がむかつきます」 「なんか風習と常識批判しだしたよ…」 「私にとって赤といえば血の色なんですよ」 「物騒すぎんだろ」 「ルークの頭もアッシュの頭もサンタの服も血の色なんです」 「俺に振るな!」 そのままぶつぶつと怨嗟の声を並べます。主にルークに対して。 段々と潤んでいくその瞳を見ていると、なんとなく溜飲が下がるのを感じます。 なんて悲しい。 しかしどこか心地よい気がしなくもありません。 …気のせいである気も、しなくもないですが。 「俺を傷つけといてそれかよ」 がくりと肩を落とすルーク。 それをスルーしたその後ろに、見知った顔を確認しました。 先程話題に出た。 赤服の。 変態が。こちらに、手を振っています。 ← → |