ボコボコにされたあの夜から、早一週間ほど。 正月である。 あれから明らかに口数が減っているので、 俺は相当ミクの機嫌を損ねてしまったらしい。…理由は分かっている。 ああ、分かっているさ。 俺はそこまで馬鹿じゃない。反省して、失敗を成功のバネにできる男だ。 そのために慣れない買い物をして、慣れない休日の早起きをして。 慣れない料理までしたのだ。 今日こそ機嫌を直してもらおう。あいつが静かだと、やっぱりつまらん。 「………マスター、…何、その格好」 ようやっと寝室から出てきたミクを、出迎える。 寝ぼけ眼でパジャマ姿のミクとは違い、今の俺は和服である。 着物である。要するに、晴れ着。 「お前、季節ネタやりたかったんだろう!?」 高らかにそう言い放った俺に、ミクがはぁ?みたいな顔をする。 ああ、分かってる分かってる。皆までいうな。 きっとこいつ、クリスマスに俺がサンタ服を着てなかったから怒ってたんだろう。 隣のお嬢さんみたいに、クリスマスっぽいことをしなかったから怒ってたんだろう! 今思えば、あの時の台詞もクリスマスソングから引用していた! 同じ愚を犯す俺ではない。 男女一着ずつの着物を借り、御節を作り。少ないかもしれんが、お年玉も用意して。 これ以上ないぐらいの正月を今。ここに具現させている! どうだミク。嬉しいだろう! 俗に言うどや顔でミクを見ると、予想していたのと大分違う表情だった。 というか、寝ぼけ眼のままである。 そしてあろうことか溜息をついて、俺をすり抜けて。 「……ばっかみたい」 と、吐き捨てた。 ← → |