そういった意味


ディストの興奮っぷりは、一周回って愛しくすら思えてきました。

アッシュとルークの同調フォンスロットがどうとか。
完全同位体がどうとか。

完全同位体、って固定音素振動数が全く同じ存在のことでしたっけ。
いくら被験者とレプリカでも人為的には作れないと聞いたような気もしますが…
深く理解しようとするのは止しましょう。
時間の無駄です。

「しかし、これは本当に価値ある情報ですよ!ああ、早く調べたいっ」
「好きにしろ」

機嫌最高とばかりにくるくる回るディスト。
対してアッシュの顔は暗く、情報そのものへの興味はないようでした。

「ではユノ、ダアトに帰りますよ」
「はい」
「…いや。ユノはここに残せ」
「「えっ?」」

…何言ってるんですかね、この人。
椅子の足を掴みなおしていたところなのに、つい離してしまいました。

「禄に使える奴がいないんだ。貸せ」

そんな物みたいに扱わないでくれますかね。

「わかりました。いいですよ」

いいのかよっ!
ディストは私を地上に残したまま浮上すると、一気に飛び去ってしまいました。
どうやら部下より情報の解析を優先するようです。
寛大とか言ってしまった十数分前の私をぶっ飛ばしたくなってしまいます。

間。
何も喋らない背後の臨時上司が、恐ろしい限りです。

「ユノ」

…仕方ないので、渋々振り返ります。
見たところ、特に先程と変わった様子もありませんでした。
ただ随分と口を濁し、言葉を選んでいる節があります。
何を尋ねたいのかは大体わかりますけれど。

「気にせずとも問題ありませんよ」

ルークは勿論、アッシュもヴァンも何も話してくれませんでした。
けれどあの状況を見れば大体のいきさつは分かります。
アッシュこそが、本来のルークなのでしょう。
皇帝の甥、王位継承者の座。さらに自分そのものの存在。
それを奪ったレプリカルークを、彼が恨まないはずがありません。

「私には関係ないですし。どうでもいい話です」

つまるところ興味がありません。
私はキムラスカの人間ですらないので、王が誰になろうとどうでもいいですし。

ただ、彼らで二者択一を迫られたのならば、私はアッシュを選ぶでしょう。
それなりに恩義はありますし、何より同情します。

そういった意味では、やはりレプリカは存在してはいけないのでしょうか?

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