残念ですが


「うわぁあああああぁん!また燃やされたあぁああぁあっ!!」

ジェイドのイグニートプリズンで焼かれて数分が経過しました。
ほぼ垂直に落下して難は逃れたものの、火へのトラウマがまたひとつ。

泣きたくもなります。
泣かせてください。

楽しそうにルークの解析を続けるディストの椅子の、
背もたれに後ろから抱き付いて。
シンクの冷たい目線はこの際無視です。どうでもいいです。
ディストとシンクの音素がどうとかいう会話も無視です。どうでもいいです。
あの眼鏡め。最低です。

「では、私はこれで。早くもっと詳しいことを調べたいのでね。
 …ユノ、いつまで泣いているんです。行きますよ」
「ふぁい」

浮遊を始めた椅子にしがみつき直します。
ディストは自分の杖があるでしょう、と文句を言いはしたものの、
振り落とす気はないようでした。馬鹿ですが寛大な上司で幸せです。

そういえば。
ディストの逃走経路の確保も私の仕事の一環でしたよね。
じゃあ、一応長杖は手に持っておきましょうか。

椅子は安定した様子で高く飛びました。
城の割れた窓に向かう途中、シンクに斬りかかるガイと目が合います。

どうして、君が。

声に出さず、唇だけを動かして、ガイは私に言いました。
ごめんなさい。
残念ですが私、あなたには、興味がないんです。

*

「後悔していますか」

城を出て、草原の上を飛行している時、そう尋ねられました。

「何をです?」
「彼らを裏切ったことです。一緒にいたんでしょう?」

ディストは私を見もしませんが、気遣ってくれているのは確かのようです。
ふむ。

「私は、裏切ってなんかいませんよ。表返ったんです」

仲間になったつもりなんかありません。
彼らはヴァンに私のことを尋ねるでしょうが、きっと適当に何か言うでしょう。
目を離した隙にいなくなっていた、とか。
あの女は自分に対して忠誠心を持っていないんだ、とか。
目に浮かぶようです。
どうでもいいですけれど。

ディストはそうですか、と淡白に答えたかと思うと。
木々の生い茂る崖を見て、このあたりですかね、と呟き。

急降下しました。

あの。私、今日叫びすぎだと思うんですけど。
停止の瞬間、がっくんと凄まじい衝撃が全身に来ました。
目も回ります。ディストは誰かと会話していて、私など目に入っていない様子で。

手を離して地面に降り立ち、ディストの会話相手を窺いました。

「…あら。お久しぶりですね」

興奮ぎみなディストの話を難しい顔で聞いていた彼は、
私の顔を見るなり明らかに不機嫌さを数割増しにさせます。
全く、失礼ですね。臨時上司さん。

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