なんて立派な


正面扉が軋んで開き、閉じる音が聞こえました。
続いて数人分の足音が震動と共に感じられます。来たようですね。

ディストがあらかじめ用意していた、階段の下の隠し部屋に身を潜めます。
椅子や機材のぶんも想定していたのか随分な広さでした。

魔物に驚いたのか勢いなのか、時折悲鳴も聞こえてきます。
アニスの声は十中八九遊びでしょう。
わざと悲鳴をあげてルークあたりに抱きついているに違いありません。
ルークの悲鳴はアニスに次いで多いです。
…状況、分かってるんでしょうか。彼ら…?

「馬鹿軍団ですね」
「同意します」

ディストと珍しく意見が合いました。

私達は襲わなかった魔物も、彼らには襲いかかるようです。
数回の戦闘、数回の漫才を経ながらも、一行は順調に屋上へ近づいています。
アリエッタの待つ、屋上へと。
しかし予想通り、彼らの歩みは一度明確に止まりました。

私達の潜む、ちょうど真上。フォミクリーの間で。

ジェイドの動揺した声が途切れ途切れに聞こえてきます。
先程ディストが話していました。
ジェイドは、自分と共にフォミクリーを開発した、同士であると。

…いえ。
浸る感傷はありません。それは分かりきったことです。
だって、私自身はこの機械と、なんの関係もないのですから。
恨み言なんて立派なものは、ありません。

彼らの会話は殆ど聞き取れるものではありませんでしたが、
突然のガイの絶叫だけは、恐らく城内に響き渡ったことでしょう。
アリエッタはともかく、シンクすら気付いたと思われます。

どーせまたアニスやジェイドがいじめたんでしょう。
可哀想に。

*

「オーラーイ、おーらーい」

アリエッタの飛龍が来るまで、それほど時間はかかりませんでした。
長い爪に気絶したルークをひっかけています。
何故気絶してるんでしょうか。まさか壁に叩きつけたりしたんでしょうか。
慎重に降りてくる飛龍から、ルークを受け取ります。

ディストがとてもいい笑顔でフォミクリーを示しました。
不愉快ですが、了解です。
ずるずると足を引きずりながら、中央の円盤に放り投げました。

「私は解析を開始します。シンク、見張りは頼みました」
「ユノ、何してんの?早く妨害に行ってよ。話聞いてたんでしょ」

このクソガキは、いつか私が殺します。

今持ったこの怒りは、現在この場所に向かっているであろう彼らに向けましょう。
覚悟してください。
私の八つ当たりは、規模が大きいんですから。



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*補足。ルーク回収したのディストでしたね。
 超忘れてました、スルーしてください


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