これはもう心底


シンクに先導され、城内を進むこととなりました。

侵入者対策のギミックは神託の盾が勝手に設置したものらしく、
居並ぶゴーレムが襲い掛かってくることはありませんでした。

ゆらゆらと浮かぶポルターガイストは、私達を見るなり逃げていく有様です。
あれはなんとも思いませんよ。撃てますから。

しばらく歩くと、長い階段の拓けた場所に。
奇妙な機械が、ありました。

「…これ」

奇妙な機械。そう呼びは、しましたが。
私はこれを知っています。見たことがあります。触れたこともあります。
何故こんな場所に、あるのでしょうか。
フォミクリー。
レプリカという模造品を作り出す、因果に反した機械。

シンクは何も応えませんでした。
構いません。返事を期待したわけではないのです。
彼に返事を期待するほど、私は非道な人間ではありませんから。

話を変えましょう。
フォミクリーの端っこに、趣味の悪い椅子が置かれています。
それが浮遊してこちらに寄ってきます。
笑顔です、輝かしい笑顔です。激しく帰りたいですね。

「ユノ!!やっと来ましたね!」

ああ、そうでした。忘れていました。
シンクとアリエッタと、ディストがいるんでしたね。
師団としての責務がどうとかこれまでの経緯とかを話すディストですが、
これはもう心底どうでもいいです。
相槌を打つのも諦め、シンクに説明を求めました。

「最終的な目的は、この機械に"ルーク"をつなぐことだよ」

はあ、と返事をします。
やはりこの場所にルークやイオンくんが来るのは決定事項のようですね。
何故フォミクリーにルークを繋ぐかは、聞かずに流しましょう。
どうでもいいですから。

「アンタの仕事はディストがこれをいじる時間を稼ぐこと。
 錯乱はボクがやるから、直接妨害とかしててよ」
「待ってください。私ルーク達に見つかるなって言われてるんですけど」
「知らないよ。そんなの勝手にやれば」

それはあんまりじゃないですか。

「それと、解析が終わったディストの逃走経路も確保して」
「待ってください!私の負担が大きすぎます!」
「ボクは他にやることがあるんだよ」

はっ、と鼻を鳴らして来た道を引き返すシンク。
飾り紐がひらひらと揺れてとっても腹だたしいです。
なんなんでしょう、このガキ。

そしてなんなんでしょう、後ろで騒がしいこの男は。
幽霊ですかね?銃弾当たりますかね?
ていっ。
ああ、避けられました。残念です。もう一発行きましょうか?

prev next

戻る
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -