できないものを


廃墟。
辿り着いたコーラル城の感想は、これが全てです。

ここはルークの父上ファブレ公爵が放棄した別荘で〜とか、
ヴァンが色々説明してくれた気がしないでもありませんけれど。
すみません。興味がないことは聞けない質なんです。

放棄される前は、さぞかし美しい城だったのでしょうが、
もはや見る影もありません。建物も庭も、ぼろぼろです。
時間的にはまだ明るいのですが、薄暗いような気すらします。
正直に言いましょう。出そうです。幽霊の類が。
だけど。
私は銃弾が貫通しないもの、科学で説明できないものを信じません。

というわけなので、特に何も考えず正面玄関の扉を開きます。
軋む音こそ出たものの、簡単に開きました。
ディストとシンク、そしてアリエッタが中にいるのでしょう。
探さなきゃだめですかね。面倒臭いですね。

玄関ホールは吹き抜けとなっていて、かなりの広さがありました。
ダンスパーティとかできそうですね。見たことないですけど。
誰かいないものかと、左階段を見ます。
いませんね。じゃあ右階段を見ます。いません。

舌打ちしたい気分で、目線を正面に戻しました。
…剣が刺さっています。

あれ?おかしいですね。
さっき見た時は、ありませんでしたよね?

どこか禍々しいその剣は、私の身の丈よりも大きいでしょう。
そんな剣がホールの真ん中にぶっ刺さっていたら、
いくら暗くとも、いくらやる気がなくとも気付きますよね?
あれえ?

とりあえず攻撃してみましょう。
前述のとおり、私は銃弾が貫通するものなら信じます。
いつも通り長杖を肩に担いで、一撃。
すり抜けました。

…………あ、あれ…?

もう一撃やってみましょうか。でも無駄だろうって思うんですけど。
というかこれ無駄だったらどうすればいいんですか?
目視できているのに銃弾が当たらない剣ってなんですか?
お、おかしいですね。暑くないのに汗が出てきました!

よしわかりました。
では先日ちょろっと考えた"秘奥義"とやらを試してみま――!

「何突っ立ってんの?気持ち悪い」

先日考えた台詞やら技名を必死に思い出している時。
左階段の上から、辛辣な声音が降ってきました。
鳥頭に鳥仮面。緑。シンクです。

見上げて彼を確認し、恐る恐る視線をホールに戻してみると。

予想通り、そこには何もありませんでした。
ダンスができそうな、だだっ広い空間が広がっているだけです。

私。初めて、シンクに感謝をしました。

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