理想への貪欲さ


「行く義理はありませんね」
「同感です」

それが私達の第一声でした。
ルークやイオンくんは驚いた様子ですが、当然の判断です。

「今はルークとイオン様を危険に晒すわけにはいかない。
 アリエッタのことは私が処分しよう」
「しかし…それでは、彼女の要求を無視したことになります」
「仕方ないですよ。イオンくん」

アニスとヴァンから驚きの視線が集まりました。
ああ、そういえば彼らに呼び名を披露するのは初めてですね。

「人選と場所の指定までして来たんです。120%罠ですよ」
「そうだ。貴行らには、砦で待機していて欲しい。
 …ユノ。お前には私と共に来てもらいたい」

了解です、と返事をします。
何か企てている顔ですね。下手に出ていますが拒否権はなさそうです。

どこか不服そうな顔の一同を残し、部屋を出ます。

魔物が撤退したため、先程の勢いこそありませんが、港はひどい状況です。
怪我人の処置に追われて掃除する暇などないのでしょう。
最低限の通路だけ空けて…と、失礼。あまり深い描写は控えましょう。

開け放たれた簡易な門が見えた時、ヴァンが独り言のように言いました。
「コーラル城には、ディストとシンクがいる」、と。
ほら。やっぱり罠じゃないですか。

「お前には先にコーラル城へ行き、奴らの手伝いをしてもらいたい」
「はあ。了解です」
「くれぐれもルーク達には会わぬよう、裏方に徹しろ」

先にってなんですか、先にって。
私が処分しようとかかっこよく言ってたじゃないですか。
それにコーラル城ってそんなに大きくありませんでしたよね?
くれぐれも会うなって、それはひどくないですか。
というかそもそもルーク達来る前提に話して…はあ、もういいです。
面倒臭いです。

ヴァンはどうやら砦に戻るようです。
コーラル城とカイツール砦の場所は全く違うので、
門を潜った途端解散となりました。

やれやれ。人遣いが荒すぎて困ります。

ヴァンはだめですね。嫌いです。
興味関心以前の問題です。
あの思想と理想への貪欲さは、見ていて疲れます。



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