ざまーみろ


明くる日の早朝、出発して一時間ほど。

とうとうルークがキレました。
彼にしてはよく我慢したと褒めても良いくらいでしょう。
そのくらい真っ当な、当然の怒りでした。

「おいガイ、おまえも戦えよ!」
「無茶言うなよ。俺が戦ったら彼女の見張りがいなくなるだろう」
「見張りいらねーだろ、そいつ!」

人を指差してはいけませんよ、お坊ちゃま。
いえ。しかし私に見張りは必要ないでしょうね。
大量のオタオタ、ゲコゲコ、トータスと交戦する彼らを視界から
完全に排除し、イオンくんやガイとの談笑に興じている私は、
必死に戦う彼らからはそれはもう憎憎しく見えるに違いありません。
ざまーみろです。死霊使い。

「なら、私が戦いますか?構いませんよ」
「却下です。貴女の武器では混戦時に暗殺される可能性があります」
「しませんよ、暗殺なんて」
「では貴女の得意な戦法を教えてください」
「いいですよ。暗殺です」

一同が沈黙に包まれました。
…はい。嘘は、ついていません。とても得意です。
それもそれなりの距離を以って、頭を撃ち抜く方法が得意です。

しかし、それは私の姿が隠れていることが前提であって。
魔物と戦っている間に彼らを殺したところで、私が魔物に殺されるだけです。
それに何よりも。

「私、貴方達を殺す理由がないんですよ。実は」

それは、隙を見てイオンくんを上司に引き渡したりできたら、
ちょっとしたボーナスくらいは望めるかもしれませんけれど。
それだけです。

「信頼できないのは重々承知ですが。少し信用してみませんか?
 私を戦力として考えれば、前線に出れる人数が増えるんですよ」
「…大佐。私は、いいと思います」
「俺も異議ないね」

ティアとガイが同意してくれました。大丈夫でしょうか、彼ら。
自分で言っておいてなんですが、かなり駄目元だったんですよ。
ルークは「楽ができるなら」と同意します。
流石の死霊使い様も、多数決には弱いようですね。

ユノ・リーランド。
久々に、前線復帰です。

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