強すぎる


川を抜ける前に、日が落ちてしまいました。
今晩はここで野宿とするようです。

「ユノ」

岩に背を預けて立っていると、ティアが声をかけてきました。
手には簡易な鍋を持っています。
食事を作るのはティアとガイが交代で担当しているらしいですね。

「ガイと一緒に薪を集めてきてもらえないかしら?
 ルークとイオン様には、頼めないから」
「はい、わかりました」
「あと…その。ごめんなさい」

目を伏せて、軽く頭を下げるティア。
何故謝るのでしょうか?むしろ謝るのは、私のほうでは?
いえ。謝るつもりはありませんけれど。

「こんな人質みたいな状況、嫌よね。せめて私が監視できたら…」
「そう思っちゃうから駄目なんでしょう、ティアは」
「……」

彼女。
どこまで私を信頼しているんでしょうか。
まさかタルタロスでのこと、仕事で嫌々やったことなんだとか、
そういう愉快な解釈をしていたりしないでしょうね…?

「気遣いだけで十分です。ありがとう、ティア」

今この瞬間に、確信しました。
彼女は軍人に向いていない。あまりに優しくて、単純で。
強すぎる使命感や忠誠心は、身を滅ぼすと相場が決まっているのに。

「では、行きましょうか。ガイ」
「ああ」

何、従ってるんですか。
ティア、ややこしくなるから口には出しませんけど。
この状況、人質みたいでもなんでもありませんよ…?


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