私のほうが


彼らに同行することになりました。

とんでもない結果です。
臨時上司に知られたら今までの比じゃないくらい叱られますね。
いえ。軽蔑するでしょうか?
どうでもいいですけど。

私のすぐ隣には、金髪もといガイ・セシルが付いて歩いています。
すぐ隣と言っても、目測1.5mの距離がありますけれど。

ミュウと名乗ったチーグルの案が採用されるまでの口論は、
まさに熾烈を極めたと言っていいでしょう。

誰かが監視した上で同行させるという案が、まず出され。
監視役を決めるに置いて、大人気ないとしかいいようのない学級会です。
ジェイドは無論、辞退。
ルークと導師は戦力的な問題で却下。
ティアは絆される可能性があるという判断で、却下。
消去法です。

しかし。
「あの、ガイ」
「ひぃっ!」
女性恐怖症、だそうです。ルークの話によると。
少しでも距離を詰めると御覧の有様です。
これ、監視になるんでしょうか?それとも殺す時は関係ないって話ですか?
いえ。興味ないんですけれど。

「別に抵抗なんてしませんよ。私」
「あ、ああ…それは、分かってるんだが」

距離をとったまま、会話します。
前方ではルーク、ティア、ジェイドが魔物と交戦中で、
導師は戦場とも私たちとも離れた場所にいます。
どうやら意図的に、私から離れているようですね。

「分かってるが、万が一って場合もありうるからな」
「疑り深いようで、結構です」
「なんだ、それ。褒めてるのか?」
「はい」

そう簡単に信用するような人間は、私のほうが信用できませんから。
導師(と、ルーク)があそこまで言ったんです。
寝首をかくような真似は流石の死霊使いさまでもしないでしょう。

「随分と数が多いですね」

この場所は当然のように水生の魔物が多く出没します。
人間に不利なのは言うまでもありません。

「助けにいかなくてよろしいんですか?」
「助けに行ったら、君が無防備になるだろう」
「逃げたりしません」
「そういう意味じゃない」

……はあ。
無防備、という言葉の意味は、私も知っていますけど。
この状況で使われると、少し…いえ。かなり、癪ですね。
ていうかこの人、本気で言っているんでしょうか。
本気で言っているとしたら。

「あなた、ホモじゃなかったんですか?」

その後私は、成人男性の涙を、久々に目撃することとなりました。


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