何であろうと


「やー、びっくりです。まさかこんな状況で貴女と再会するとは」
「私もびっくりです。まさか貴方が導師誘拐の犯人だなんて」
「運命とはわからないものですね」
「まったくです」

監禁される直前だというのに、随分と余裕ですね。この人。
意識のないティアとルークを神託の下っ端が。
意識のあるジェイドの縄を、私が管理して。
徒党を組んで船室へ向かっています。船内は…まあ。
説明するまでもありませんね。地獄絵図、続行中です。
この後掃除するのも私達なんでしょうか…

「一緒にいた彼は、貴女の上司ですか?」
「答える必要はありません」

和やかにおしゃべりなんてしてたらそれこそ叱られますからね。
しかし。
私は彼に、訊きたいことがあります。

「前にいる、青年のことですが」

ジェイドの纏う雰囲気が変わりました。
私の位置から彼の表情は見えませんが、恐らく変わったのでしょう。

「彼は、ルークですよ」

私の言葉を待たず、断言されました。
…ええ。断言というか、断定といいますか。
肯定されたも同然です。

「そうですか」

久々に言いましょうか、この台詞。
興味ありません。
アッシュが、ルークが、被験者でも模造品でも。
何であろうと、私の中にある彼らの定義は少しも揺らぎません。

それは決して美しい意味ではないです。
正体を知って揺らぐほど、彼らの定義が立派なものではない。
それだけのことですから。

「では、カーティス大佐。こちらへどうぞ」

ルークとティアが放りこまれた直後の、同じ牢を指先で示す。
ジェイドは意味ありげに微笑み、中へと入りました。

*

そういえば、船員は皆殺しとか言ってたような気がしますけど。
あれ?じゃあ何で彼らは殺さないんでしょう?
…"閣下のご命令"?ですかね。

船員を殺すのは、まあ導師誘拐の犯人だから、で十分でしょうけど。
どうも預言通りに戦争を起こすためって理由じゃ足りませんね。

何が動いているんでしょう。
何に動かされているんでしょう。

興味ありませんけど。


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