出来損ない


…まあ。

あれが、当然の反応…なんでしょうね。

血に濡れた剣を見て。血に濡れた手を見て。
地に伏した、その身体を見て。

真っ青になって震えて、絶叫する、彼。
臨時上司の表情は、私の語彙ではとても表現できたものじゃありません。
ふむ。
絶好のチャンスなんですが、撃ってもよろしいんでしょうか?

その場にへたり込んだ彼の頭部に標準を定めた時、
操舵室からティアとジェイドが戻ってきました。大変です。
三人固まってしまったのなら、まずはジェイドですね。

「アッシュ、撃ってもい―…」
隣を窺うと。アッシュの頭上には氷塊がありました。
アッシュは譜術にも秀でているのでしたね。失念していました。

「人を殺すことが怖いなら、剣なんか棄てちまいな!」

叩きつけるような叫びと同時に、氷の槍が彼らに降り注ぎます。
出来損ない。そう続けられた声は、レプリカの彼に届いたのでしょうか。

ジェイドは辛うじて避けたようですが、彼とティアには当たったようです。
その場に倒れ伏したのを確認するためか、アッシュが甲板に降り。
私もそれを追って、その場から飛び降ります。

「…あなたは……!」
ジェイドの瞳が見開かれました。
勿論、私に対してではありません。アッシュに対して、です。
彼はどうやらレプリカについて知っているようですね。

「どうします?臨時上司」
「殺せ」

わー。即答ですね。了解しました。
では最初の目的通り、ティアから殺しましょうか。
倒れている彼女に銃口を向けた直後。邪魔が入ってしまいました。

「待て、アッシュ。閣下のご命令を忘れたか?それとも我を通すつもりか」

あれ、リグレット。まだいたんですか?
閣下のご命令、がなんなのか私は存じ上げませんけれど。
アッシュの感情を抑えるのに、その言葉は十分だったようです。

「ユノ、どこかの船室に放り込んでおけ」
「へーい」

今日の私の働きっぷりには、自分でもびっくりです。


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