わざとらしく


一言で言うなら、地獄絵図。

戦闘準備を怠っていたわけではないようですが、
やはり上空と地上からの奇襲には少々対応が間に合わないようですね。
甲板にはすっかり生きている人間がおりません。

「相変わらず退屈そうね」

背後からの声は、見知ったものでした。
危ないですね。癖で銃口突きつけちゃったじゃないですか。
「そう見えますか?リグレット」
確かに手ごたえがなかったのは事実ですけれど。
大変なよりは簡単なほうが良いです。

「導師イオンを保護したわ」
「ふーん」
「後は殲滅するだけよ」
「へー」

返事をしつつ、視線を若干上に向けます。
操舵室の屋根の上には、私が今くっついている臨時上司の姿。
私がすべきことは、殲滅ではなくて。
「迎撃ですよね」
残った者は、操舵室を奪還する以外に生き残る道はありませんから。

安心してください、リグレット。
私はサボり魔でやる気も根気もありませんけれど。
ありませんけれど、完璧主義者なんです。

「あなたの大事な守り人。いなくてよかったですね」

私は、わざとらしく首を傾げて。
いいえ。リグレットを視界から外し、その奥を見て。

よく知る顔の、まったく知らない人物を、見て。

「そう思いませんか?"イオンさま"」

ええ、ごめんなさい。我ながら大人気ないですね。
こんな状況でも全く動じない、そんな毅然な態度が、鼻につくんですよ。


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