守ってくれない


「ねぇ、ユノ。僕、死ぬんだってさ」

隈のひどい、疲れた顔で吐き捨てるように呟くイオン。
一瞬呆気にとられましたが、すぐに「へぇ」と返事をします。

どうやら望む返答ではなかったようで、据わった目でにらまれました。

「もっと他に反応あるんじゃないの」
「人は死にますよ。当然です」
「寿命の話なんかしてない」

本当に苛立っているようで、これ以上彼の望まない言葉を出したら
譜術とかでボッコボコにされそうですね。黙ります。
イオンは黙った私を見て、「僕はあと三日で死ぬんだ」と呟きました。
あらあら。

「預言ですか?予感ですか。それとも冗談ですか」
「冗談だったらいいんだけどね」

彼の視界の中に、私の姿はありません。
枕元に置かれた魔物の頭骨、
アリエッタの姉(的な存在)であるライガの頭骨の姿があります。

イオンは死ぬんですか。
じゃあアリエッタのお姉ちゃんは、イオン様を守ってくれないわけですね。

「なんで私に言うんですか?そんな面倒なことを」
「…そう言ってくれるからだよ、ユノ」

彼の死が近いのは、知っていました。
そして彼の生を捏造する計画にも、気付いていました。
本当は駄目だったんでしょうね、イオンが私の殺害を考えていたのも、
知っていたんです。でも私はまだ、殺されていない。

「導師イオンは、私が好きだったんですか」
「はぁ?」

凄まじい嫌悪の込められた返事ですね。
「大ッ嫌いだよ、ユノなんか」
はい、知ってました。さっきの「はぁ?」で確信を得ました。

「それで、君も僕が大嫌いだからこそ、言うんだよ」
「別に大嫌いじゃありませんよ」
「興味がないの?」
「ええ、そうですね。興味ありません」

適当に教団で働いてたら、なんか導師守護役になってたんですよ。
この性悪を敬愛するわけないし、何かあったら一人で逃げたいと思ってます。
アリエッタみたいな導師守護役の鏡みたいな子とは正反対ですね。
彼女は素直で盲目だから大好きです。

「その興味ないってのさ、続けてよ。ずっと」

深い緑色の、淀んだ瞳。
子供らしい無邪気さなんか微塵もない微笑みで、私を見ます。

「僕じゃない僕に、興味なんか持たないでよ」

その、三日後。
あまりにもあっけなく、イオンは死にました。


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