関連性は


面倒だから次考えよう、なんて。

我ながら悠長で無用心で馬鹿なことを考えたものだとつくづく思います。
せめて原因だけでも考えておくべきでした。

例えば、直前に何があったか、とか。


「ユノさん、大丈夫ですか?ケセドニアにも医者はいると思います」

「…大丈夫です」


心配そうに顔を覗き込もうとするギンジから目を背け、
逆流してきそうな胃液を呼吸と共に押し戻します。
いっそ吐いたら楽になるのかもしれませんが、それは嫌です。
絶対に嫌です。


アッシュと漆黒の翼がザオ遺跡内へ消え、早一時間。

つまり私がぶっ倒れてから一時間が経過しました。


本当に何があったのか理解できませんでした。
何の疑問もなくアッシュについて遺跡に踏み入った途端、
先ほどとは比べ物にならない程強い頭痛や耳鳴りが始まり。

あれ、これやばくないか?
そう思った直後には、アルビオールの内部で寝かされているところでした。

ノワール曰く、受身も何もなく、顔面から床へ突っ込んだそうです。
あまりに突然だったために誰も反応することができず、
倒れたまま動かない私を見て暫し時間と呼吸が止まったとかなんとか。
このへんはどうでもいいですね。

運んでくれたのはアッシュだそうですが、
あの日の再現とばかりに腕だけを掴んで引き摺っていたのだとか。
意外と粘着質なんですね。すみませんでした。


「ありがとう、ギンジ。だいぶ楽になりました」


耳鳴りが大分減り、視界もはっきりしてきたのを期に起き上がります。
自分では窺えませんが顔色も幾分かよくなっているようで、
ギンジも安心したように表情を綻ばせました。


「ユノさん、失礼ですが持病などはありますか?
 貧血や過労にしては、少し妙な症状だと思うんですけど」

「…持病」


過去の記憶を遡り、身体関係の出来事を探ります。
そうですね。心当たりといえば、アッシュを引き摺る直前のことでしょうか。
第三音素が少ない体質、だとか。
だけどあれは関係あるんでしょうか。
ザオ遺跡は第三ではなく第二音素の多い場所ですし、関連性はあまり…

「あ」

視線を泳がせていたところ、窓の外に四人の姿が見えました。

ギンジも直後に気付いたらしく、律儀な彼は外へ駆け出して出迎えに行きます。
私一人機内に残されるのは若干心苦しかったものの、
出迎えに行くのはとても面倒臭かったので、黙ってシートに背を埋めます。


どうしたものですかね。
浅学の私では音素学などそれこそ最低限しかわかりませんし、
そもそも今まで不自由していなかったので。今更調べるのも億劫です。

一瞬だけ先日別れたジェイドの顔が浮かびましたが、迷わず却下。
頼みごとなんて冗談じゃない。


「まだ具合悪そうだねえ」

いつの間にか乗り込んでいたノワールがそう声をかけてきましたが、
曖昧に微笑んで適当に流します。そうでもないですよ、と応えましたが、
どうも信用していないような様子でしたので。

いえ、それはどうでもいいです。
私自身が気に留めていないことを心配されても正直面倒なだけですから。

静かに向けられるアッシュの視線も無論のことスルーです。


「次は何処へ向かうんですか?アッシュ」

「アクゼリュスだ」


淀みなく即答したアッシュに、つい目を見張りました。


「だが崩落後の状況が全くわからん。最初の目的地はセントビナーだ」

「情報収集ですか」

「そういうことだ」


アッシュの返答とほぼ同時に、アルビオールの機体が持ち上がります。
セントビナーですか。
正直少しだけ行き辛い場所ですが、まあそれはどうでもいいでしょう。

とにかく、眠いです。
おやすみなさい。

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