少なくとも私は


「実は僕、ティアの障気を取り除く方法に心当たりがあるんです」

イオンくんの言葉に、視線が一斉に集中します。
しかし彼はその先を躊躇うように俯いて、か細く喉を震わせ。

そのためには、僕の。
そこまで言ったところで、小さな扉が勢いよく開かれました。


「イオン様!大変です!!」


アニスでした。
呼吸を乱した彼女に緊急事態と察したのか、ティアが上体を起こします。
イオンくんはそれを慮ってか「アニス、どこへ行っていたんです」と
珍しく僅かながらの非難を滲ませました。…が、アニスはそれを気に留めず。


「それが、外が大変なんですよぅ!
 障気がバーンと出てきて、マジヤバですっ!イオン様、来てください!!」


早口でまくし立てたアニスは、私達には目もくれず。
状況を飲み込みきれていない様子のイオンくんを連れて、
部屋を飛び出してしまいました。…嵐みたいですね、本当に。

障気が復活したという情報よりも、
アニスの行動に呆気に取られてしまいました。
思わず立ち尽くした無駄な時間があったことを認めましょう。


「また障気が出てくるなんて…どうなってるんだ」

「障気は押し込めただけなのでしょう?再発する可能性はありましたよね」

「ええ。ですが、…偶発的なものとは思えません」


ヴァンが生きているとしたら。
誰もがそう思っただろう時、率先して扉を抜けようとするティアの姿が見えました。


「ティア!駄目ですわ、貴女はここに残りなさい」


ナタリアが鋭く制しても、彼女は揺らぐことなく。
様子を見に行くと言って譲りませんでした。

…まあ、確かに室内といえど屋外と大した差はないでしょう。
それにティアの性格では大人しく休んでいるとは考えにくい。
だったら連れて行って気を配ったほうが面倒がありません。

少なくとも私はそう考えましたが、他の面々がどうだったかは知りません。

とにかくルークは渋々ながら、彼女の同行を許可したのでした。


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