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え、えーっと。

とりあえず自己紹介?か。こんにちは。ルーク、です。
今回の語り役を担当すっけど、いいのかなあ。

でもまあユノは冷静に独白したり解説したりできる状況じゃないし、
ティアとかナタリアに担当させたらどうなるかわかんねーし。
適任かな。

ジェイドとアニス、イオンまでやったっていうし、いっか。
じゃあ短い間だけど、どうかご清聴ください……でいいのか?


*


ガイの宝剣を屋敷に置くため、ピオニー陛下への報告のため。
ユノの提案でグランコクマへやってきた俺たちは、
まあ例のごとくっていうか案の定っていうか。
陛下の面倒ごとに巻き込まれてしまった。

俺、あの人苦手なんだよなぁ。
あのジェイドも全然歯が立ってないし、どうもやりにくくて…


「あら、いましたわ。この子は…ジェイドですわね」

「はわ〜。名前の割に単純なとこに…」

「………」


階段の影からブウサギを抱え上げたナタリアに、アニスの言葉。
思わず噴出すと、無言で無表情のジェイドが目に入る…怖ぇっ!

かなり苛々しているらしく、指先の動きとかがなんとなく忙しない。
ふと前髪に隠れた赤い瞳を泳がせたかと思うと、
俺達の輪から外れて欠伸をしていたユノにつかつかと歩み寄った。

「ぎゃっ」

わしづかみにされるユノの頭。
すっかり見慣れた光景だけど、相変わらず痛そうだ。
最近では声を荒げることも多くなったユノだけど、一番大きく叫ぶのは
ジェイドにいじめられてる時…だと思う。
ガイがいないから被害倍増してんだよな、可哀想に。

後が怖いから、俺は助けてあげられないけど。


「もう我慢なりません。…ユノ、貴女が一人で探しなさい」

「はぁっ!?嫌ですよっ、ここどんだけ広いと思っ痛い痛い痛い痛い」

「歩いていればどうせ寄ってくるでしょう」

「人をブウサギホイホイみたいに言わないでください!」


ジェイドの握力が一層強くなった(ように見えた)時、正面玄関が開く。
呆然と立ち尽くしてこちらを見つめるガイ。
ああ、よく来てくれた。早く助けてやってくれ。
そう誰もが思っただろう瞬間、ガイの足元から何かが滑り込んできた。

ブウサギ。しかも四匹。

丸い図体を揺らし、短い四肢でてけてけと走ってきたブウサギは、
心なしかジェイドの足を攻撃するようにしてユノの足元へ集結した。

…ブウサギホイホイ、な。なるほど。

「か、かわいい……」

ティアの恍惚とした呟きと共に、ガイが俺の隣に立つ。
「何があったんだ?」って。俺の台詞だよ。


「ユノって動物に好かれるよな。コイツも懐いてるし」


肩に乗るミュウに視線を寄せると、重そうな頭がこてりと傾げられた。

なんだろうな。
口はともかく性格も見た目もそんなに悪くねえんだから、
もっと愛想よくしてればいいのにっていつも思う。
…あれか。前陛下が言ってた"つんでれ"ってやつか?


「いや、デレてないと思うぞ」

「それもそうだな」

「しかし、まあ確かに動物とか子供とかには好かれてるな。
 本人はあんまり気にしてないみたいだが………あれ?」


ジェイドの手から開放され、
手近なブウサギを抱えて感謝を述べているユノの姿。
アニスやナタリアも便乗してブウサギを撫でる光景は、なかなか奇妙だ。
ティアも羨ましいなら言ってくりゃいいのに。

ガイはそれをじっと眺め、指を顎に当て、唸った。


「"ユノ"がいないな。探しにいかなきゃ駄目じゃないか?」


陛下の下へ行けたのは、それから数十分後だった。

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