私が死んでも


「……結果は、どうなったんだ?」

目線を逸らし、すっごく嫌そうな顔で尋ねるアッシュ。
ふふん。私を誰だと思っているのですか。

「今ここで貴方と話してる。これが充分な証拠です」
「仕事をしろ、馬鹿」

だから、仕事をしなくていいように"お願い"したんじゃないですか。
あの勢いで承諾したんだから驚きましたよ。
『第二師団以外で好き勝手働いて休んでもいいか』なんてお願いを。

技術はあるのに、頭の中が可哀想なんですよね。あの人。

「というわけだから、私は好き勝手に惰眠を貪ります」
アッシュが呆れた風にため息をついた、直後のことでした。
ご報告申し上げます、と神託の盾一般兵士が飛び込んできたのは。

「導師イオンが、行方不明になりました」

*

いえいえ。
私、一介の奏長に過ぎないんですけれど。

明らかに人目を忍んだ作戦会議に強制参加させられました。
部屋にいるのはヴァン謡将と、ディストを除く六神将全員です。
そして、彼らの副官レベルの兵士が壁際に並んで立っていました。

「導師イオンは、マルクトの戦艦<タルタロス>に搭乗している」

シンクが大型スクリーンに映し出された地図を示します。
行方、わかってるじゃないですか。
そもそも私は導師なんかに興味も関心もないのですけれど。

「こいつらの目的地はバチカル。目的は、和平の使者になることだ」
「しかし、戦争が起こらなくては困るのだよ」
「…イオンさまを、殺すの…!?」
「殺さないわ、勿論。だけどやってもらいたいことがあるのよ」

………えーと。
話がわかりませんね。彼ら、一体何を言っているのでしょう。
戦争が起こらないと困る、とか。
ホド戦争の時代には生きてましたけど、直接関係はないですし、
知識も曖昧なんですけど。戦争って、ないほうが良いものじゃないんですかね。

「今夜、出発。到着次第、タルタロスを潰すよ」

いえ、まあ。
誰が死んでも、私が死んでも、どうでもいいんですけどね。

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