身を挺して


………あれ?

私がガイを宮廷に送り届けている間に、知らない文章が混じってますね?
前にもあったような現象ですが、以前よりは害がなさそうというか。
とにかく気にしなくてよさそうです。
してませんけどね。

「…あれ、ユノ?まだ帰ってなかったのか」

玉座の間からガイとジェイドが揃って出てきました。
帰ってなかったというか帰らせてもらえなかったというか。

「いえ。案内は顔見知りのほうがいいかと思いまして」
「案内?」

ガイが露骨に訝しがりますが、ジェイドはそれを笑顔で受け流し。
受け流して、私にパスします。

「ユノ。説明を」
「え…まさか私、ガイと同列扱いですか?」

説明とか大嫌いなんですけど。
「ユノ」
ああもう分かってます!分かってますから頭痛い痛い痛い痛い痛い!!

「えっとですね、グランコクマの貴族街に
 ガルディオス家の屋敷が完成してるのでそちらへのご案内ですだだだだ」

「結構」

解放されました。
…ジェイド、ストレス溜まってるんでしょうか。
なんだかどうも暴力的になっている気がするんですけど。

「ジェイド、お前なんだかんだでユノのこと気に入ってるんだろう?」
「ええ。握りやすい頭です」
「…」
「いつか潰したいなあなんて願望を持ってもいます」

女嫌いのガイが身を挺して庇ってくれました。

ストレス溜まってるのかなんて同情的な感情を抱いた自分を殴りたいです。
最低だよ、このおっさん。
そこまで嫌われる謂れはありすぎるので反論しませんけど。
自覚ありますよー。
謝りませんけどね。私は悪くありませんから!

「ガイ、行きましょうか。迅速に。今すぐ」
「……じゃあなジェイド、また明日」
「ええ」

少しも爽やかじゃない笑顔を残して宮廷を後にします。
もうすっかり日が落ちて真っ暗ですね。
街灯の光が白い宮廷の壁に反射する様はとても美しいのですが、
背後からどことなく感じられる威圧感が恐ろしいので足を止める余裕はありません。

本当に人間でしょうか、あの男。

「ユノ」
「はい」

ガイの声はだいぶ後方から聞こえてきました。
仕方ないので立ち止まると、彼の指は私に突きつけられておらず。
私の足元を指していて。

「ついてきてるけど、いいのか?」

こちらを見上げるブウサギの円らな瞳に、絶叫する私。
もう勘弁してくださいよ。

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