昔から、本当に


「ル……アッシュ!お怪我はありませんか!?」

しばらく唖然としていたナタリアが、はっと我に帰り。
少し離れたところにいるアッシュの元へと小走りで寄っていきます。

その様子をアニスとジェイドと三人並んで見守ります。
転ぶだろうなあ、なんとなくそんな気がしました。

そして案の定、彼女は石につま先を取られ。
きゃっ、と前のめりに倒れかけます。
それを咄嗟に、優しく、ぶっきらぼうに支えるアッシュ(17)。
思わぬ近距離に頬を赤らめるナタリア(18)。…あれ、(19)でしたっけ。
「あ、ありがとうございます」「足元には気をつけろ」
そんな会話の後、どことなく近い距離を以って私たちを先導するふたり…

「いやぁ。若いとはいいですねぇ」
「まったくですねぇ」
「見ていて微笑ましい反面、背中が痒くなりますね」

上からジェイド、アニス、私です。
以前図書室に紛れていた安そうな恋愛小説を思い出します。
当時はこんなのありえないだろ作者は何を考えて書いたのだと思ったものですが。
申し訳ありません。存在しました。

いえ、あの。どうでもいいんですけど、あの人たち歩くの早すぎませんか?

*

微妙な空気のまま、辿り着いた最深部。
随分と拓けたその空間に放置されていたのは、フォミクリー。
といってもフォミクリー自体は放置されて長いようですね。少し錆びています。
最近使われていたのは、傍らの機械のほうでしょう。
機械学は不得手なので上司にお任せします。

フォミクリーの効果範囲についての研究、だそうです。
アッシュに加わり、開発者のジェイドがいるのだから確かでしょう。

ヴァンの目的はやはり"レプリカを作ること"で確定ですね。
では、なんのレプリカを作るのでしょうか―…

「なんだこいつは!?ありえない!」

突然の声に、アニスやナタリア同様、私も驚いてアッシュに駆け寄ります。
そして、アッシュが提示した画面の表示を見て。
驚きに絶句し、しばし言葉を失いました。

「約3000万平方メートル…規模、大きすぎませんか…?」
「そんな巨大なもの。レプリカを作っても置き場がありませんわ!」

オールドラントの、10分の1。
マルクト軍が処分した住民票のデータ。

そこから導き出される答えは、ひとつしかありません。

きっとヴァンは、ホドのレプリカを作るつもりなのでしょう。
今は無き、彼の故郷を。

しかしそのためにアクゼリュスを崩壊させる必要があったのでしょうか。

わかりません。
あの男の考えることは、昔から、本当にわからない…

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