脅迫です


私の上司は常軌を逸した馬鹿です。

改造してさしあげます、と武器の銃杖を取られて半日。
呼び出されて出向いた『華麗なる研究室』内部は、混沌としています。

「自信作です」

キリッときめた顔で差し出された、私の杖。
ぱっと見変わりはありませんが、意味深なボタンが追加されていました。
思わず、上司(仮)の表情を窺います。
すごくキラキラしています。

嫌な予感しかしませんが、押してみました。

飛びました。

*

「う、うわ、おっ、あああぁああぁあっっ!!?」
「はーはっは!予想通りです!素晴らしいでしょう、ユノ!?」

ボタンを押した瞬間に謎の浮力を持った杖は、
私をぶら下げた状態で、一気に天井すれすれまで上昇しました。
いやあああああ高いぃいいいいいぃっ!!

「想定より貴女の体重が軽かったようですね。胸の分ですか?」
「うるさい黙れ!」

女性の胸に恨みでもあるんでしょうか。
アニスにつるぺた呼ばわりしたことは教団中に知れ渡っています。
それに、ありますよ!胸くらい!…人並みには!

「一人か二人なら抱えて飛行できますよ。どうですか、私の技術!」
「いいから降ろし方を教えてください!」

間。

30分に及ぶ使い方講座(+苦労話)の後、私は作戦を実行しました。
私の自由のために。
私の睡眠時間確保および、勤務時間削減のために!

「『薔薇の』ディスト様は、さすが優秀ですわねぇ」
「!」

一瞬で目の色が変わりました。単純な男です。
この喋り方には自分で鳥肌が止まりませんが、構うものですか。

「私、ディスト様の部下になれて幸せです」
「そ…そうですか!そうですか!」
「ところで、ディスト様。ユノ、お願いがあるのですけれど」

なんですか、何でも言いなさい。
そんな表情の上司は確か30代だったはずですよね。大丈夫でしょうか。

ちなみにお願い、なんて柔らかい言い方をしてはいますけれど。
これは脅迫です。彼に拒否権なんかありません。
断った場合は、それなりの行動をもって、承諾させてみせましょう!

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