連想する物体
ベルケンドは研究施設を中心とした街で、
全体的にインテリっぽいというか、頭よさそうというか。
どうも肌に合わない場所です。相変わらず。
ヴァンが出入りしていた施設は第一音機関研究所、というそうです。
タルタロス内部よりはいくらか和らいだものの、
とても居心地が良いとはいえない空気の中。私たちはその門扉を開きました。
アッシュの先導に従い、辿りついたのは"レプリカ研究施設"。
…この先であるだろう会話がなんとなく予測できたような気がしました。
迷わずその扉を開いた上司は部屋の隅にいた老人を怒鳴りつけ。
驚愕に目を剥いたその老人は、さまざまな事実をこの場に露呈させたのでした。
*
回想終了。
現在地は研究施設前、一同の重い沈黙が続いて数分。
イオンくんの顔色は青く、小刻みに身体を震わせています。
レプリカ製造機械、フォミクリー。
彼を生んだ、その忌まわしい技術の根源が、目の前にいるこの男。
衝撃の事実、とでも言いましょうか。
彼にとっては特に密度の高い日々の連続であるのでしょう。
私にはどうでもいいことですが。
「ヴァンは、レプリカ情報を集めてどうするつもりなのでしょう」
呟きを落としたのは誰だったのでしょう。
正直、この沈黙にも飽きていたので渡りに船です。
「それは勿論、レプリカを作るんじゃないですか?」
適当に話を合わせると、他の面々もぼそぼそと意見を出すようになり。
最終的には、ワイヨン鏡窟という場所に行くこととなりました。
「レプリカ製造にはフォニミンが必要不可欠です。
それが採掘できるあの洞窟になら手がかりがあるかもしれません」
笑顔のジェイドですが、心なしか唇の端が引きつっています。
私の顔も引きつっていることでしょう。
ワイヨン鏡窟。私たちがこの名称で連想する物体は、恐らく共通しています。
「……あの、ジェイド」
いえ、同姓の人間など珍しくありません。一応確認をとりましょうか。
「なんですか、ユノ」
「私の勘違いだったらすみません。あの、その、ワイヨンって」
「………」
「…あー、勘違いでしたね。すみませんでした」
その眼鏡、どういう原理なんですか?
何故ジェイドの心境に合わせて眩しく光るんですか?
謝ります、謝ります。だから許してください。
「ユノ」
はい、と返事をして、私を睨む上司に向き直ります。
「漫才はそれくらいにしておけ」とは随分ですね。漫才なんかしてません。
目的地ができたことで多少意欲が上がったのか、各々足を動かします。
ひとりを除いて。
「俺は降りるぜ」
……意外とトラブルメーカー似合うんですね。びっくりです。
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