気持ち悪い


「やぁあ〜〜っと見つけた!ユノっ!!」

再び教団、中央ホール。
この声には振り返る必要がありませんね。

「ちょっと無視しないでよ!聞こえてるんでしょっ」

あーもーうっさいなー。
仕方なく振り返ると、両手を腰にあてて頬を膨らす幼女の姿がありました。
いえ、年齢的には少女なんでしょうけど。
ぬいぐるみを持ったツインテールの彼女は、幼女と表現しても良いでしょう。

「ユノ、ジェイド大佐に私の居場所教えたでしょ」
「はい」
「もうっ!ちょっとは悪びれてよね!」

ぷんすか。そんな効果音が似合う怒り方のアニス・タトリンに、
内心めんどくせー奴に捕まったなあと思ったのは内緒です。

「聞かれたんだから、応えます」
「でも…!」
「私は言いませんし、多分彼も言わないと思いますよ」

アニスが言葉に詰まりました。
私が言っているのは彼女の副業、巡礼碑ガイドの話です。
神託の盾はあくまでも宗教なので、
仕事として報酬を受け取るのは禁じられているらしいのです。

まあ副業に神託の盾を利用しているのは彼女に限ったことではありませんし。
わざわざ咎めるのも面倒ですしね。正直どうでもいいです。

そうですね、他に預言なんかでも儲かりません。
皆さんの寄進で、私達は生活しています。
…いえ、信じちゃいませんけどね。そんなの。
信じていたら、あの豚を代表として、高階位の贅沢が説明できませんから。

「アニス。そろそろ導師のお食事の時間ですよ」
「え?…あぁっマジヤバっ!?じゃあねユノ、ばいばい!!」

嵐のように走り去るアニス。
やれやれと見送りながら、彼女の制服にほんの少しの感傷に浸ります。

導師のお食事の時間、ね。
もう二年も経つのに覚えている私が、自分で気持ち悪いです。

その時間が、二年前と寸分違わないのも。
気持ち悪いです。

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